第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

栄養

[O74] 一般演題・口演74
栄養03

2019年3月2日(土) 10:25 〜 11:05 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:森脇 龍太郎(帝京大学ちば総合医療センター 救命救急センター)

[O74-5] ICU入室患者の経口摂取開始を遅延させる要因

今井 美恵, 田嶋 優花, 佐々木 美里, 上野 静香, 荻原 大輔, 角田 千登勢, 嶋田 敦子, 渡辺 優作, 篠原 明日香, 渡部 修 (佐久総合病院 佐久医療センター)

【背景】挿管が新たな嚥下障害を引き起こすことが指摘されており、集中治療室(ICU)での嚥下障害の発症率は約10%、その60%は退院まで改善しないという報告もある。また、嚥下障害を有する患者では、経管栄養管理や人工呼吸管理の期間が長くなり、そのためICU管理や入院期間も延長し、院内死亡率も高くなるといわれている。
【目的】本研究では、ICUに入室した患者が、ICU入室翌日までに経口摂取を開始できなかった要因を探索的に検討することを目的とする。
【方法】本研究は後向き観察研究(横断研究)で、2018年1~3月に当院ICUに入室した20歳以上の患者を対象とし、入室当日に退室した患者は除いた。臨床研究・治験審査委員会からの承認を得て、インフォームド・コンセントについてはオプトアウトを採用した。電子カルテからデータを抽出し、JMP(SAS社)を用いて統計解析を行った。経口開始の有無により背景因子等を比較し、検定に際しては有意水準両側5%とした。
【成績】対象患者は151人(男106、女45)で、年齢中央値72歳(範囲38-96)、約60%が気管挿管及び人工呼吸管理されていた。ICU入室翌日までに108人(72%)が経口摂取を開始し、ICU退室(中央値4日)までにさらに17人が経口摂取を開始できた。ICU入室翌日までに経口摂取を開始できた患者108人とできなかった患者43人では、性別、年齢、喫煙、介護度、心疾患・脳卒中・腎機能障害の既往に差はなく、気管挿管の有無のみ統計的有意差をみとめた(p<0.01)。開始できなかった患者の主な疾患は、食道癌、大動脈解離スタンフォードA、狭心症、呼吸不全であった。また、ICU入室翌日までに経口摂取を開始できなかった患者の方が入院期間は長かった(p<0.01)。
【結論】ICU入室翌日までに経口摂取を開始できなかった患者では、ICUでも気管挿管を継続していた患者が多く、気管挿管が経口摂取開始を遅延させる大きな要因と言え、気管挿管の回避又は短縮が望まれる。今回はそれ以外の要因を認めることはできなかったが、今後、症例数や可能性のある背景データを増やし、更なる調査を進める予定である。