第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

医療事故訴訟・医療安全

[O80] 一般演題・口演80
医療事故訴訟・医療安全01

2019年3月2日(土) 16:40 〜 17:30 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:成松 英智(北海道公立大学法人札幌医科大学救急医学講座)

[O80-6] 症例集積:他職種検証によるICU医療機器使用管理の安全性向上

久下 晶子1, 加藤 啓一1, 浅野 哲1, 青山 道子2, 山本 高広3, 滝寺 康雄4, 長内 佐斗子5 (1.日本赤十字社医療センター 麻酔科, 2.日本赤十字社医療センター ICU, 3.日本赤十字社医療センター 臨床工学技術課, 4.日本赤十字社医療センター 薬剤部, 5.日本赤十字社医療センター 医療安全推進室)

【背景】生命維持装置など多種医療機器を常時取り扱うICUでは部門特有の不具合事象が発生しており、取り分け安全な機器使用管理が求められる。
【目的】医療機器使用管理に対し、多職種による不具合事象の検証と対策提言の有用性を報告する。
【方法】新病院移転後9年間で医療の質・安全管理システムへICUから登録された事例を対象に、多職種による検証と対策提言が行われた事例を集計した。
【結果】ECMO回路閉塞1例、小児心臓外科術後ペースメーカーリードの断線1例・事故抜去2例、IABPカテーテルの位置ずれ1例、フットポンプの電源ケーブルから突如発火1例、外転枕の圧迫による腓骨神経麻痺1例、電源コンセントの事故抜去3例、ECMOタコ足配線での電源切れ1例、NPPV装着による顎関節脱臼1例、自動血圧計使用による上腕内出血1例、点滴台の転倒1例、呼吸器回路のリーク6例、CVC・PICC破損2例、テンポラリーペースメーカーのシリンジ部の破損1例、人工呼吸器の動作不良4例、CHDFの動作不良3例、持続ドレナージシステムの動作不良2例に対し医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、医療安全推進室により検証され、改善策が提言された。
【提言】1)医療機器の中央管理:医療機器をICU常備とせず、MEセンターで定期点検する。現場使用中にも必ずME・Nsがラウンドし、正常な作動を確認する。
2)電源ケーブルに緊張のかからない医療機器の保管:電源プラグ、電源ケープルの劣化・断線を防止する。
3)電源保護:重要機器の電源コードは壁電源につなぎ、整理して床に並べて固定する。
4)ペースメーカーリード固定の補強:縫合糸の経時的な緩みを考慮し、テープで固定を補強する。
5)良肢位保持方法:外転枕等のテープ圧迫による腓骨神経麻痺が生じ得るため、場合に応じて砂嚢を使用する。
6)自動血圧計設定:血圧予測機能による強圧を防止する。
7)呼吸器回路のリーク:事前のリークテストの徹底。
前例のない事柄も含まれるが、多職種による検証によって原因ならびに解決策が見出せた。提言が現場に浸透したことにより、不具合事象の発生が事前に防止され、また予測不可能な機器の故障等が生じた場合にも早期発見が可能となった。事実、同様事例の報告件数は年次毎に減少した。
【結語】ICUでは多職種による医療機器不具合事象の検証と対策提言が、医療機器使用管理の安全性を向上させる。