第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

医療事故訴訟・医療安全

[O81] 一般演題・口演81
医療事故訴訟・医療安全02

2019年3月2日(土) 17:30 〜 18:30 第9会場 (国立京都国際会館2F Room B-2)

座長:山口 弘子(名古屋掖済会病院)

[O81-1] カテーテルアブレーション後に後腹膜血腫による重篤な合併症をきたした一例

佐藤 幸世1, 布施 洸2, 本村 瑞貴3, 平澤 憲祐1,4, 関谷 宏祐5, 森下 幸治5, 柳下 敦彦4, 合屋 雅彦4, 平尾 見三4, 重光 秀信1 (1.東京医科歯科大学 医学部 附属病院 集中治療部, 2.東京医科歯科大学 医学部 附属病院 総合教育研修センター, 3.東京医科歯科大学 医学部 附属病院 麻酔科, 4.東京医科歯科大学 医学部 附属病院 循環器内科, 5.東京医科歯科大学 医学部 附属病院 救命救急センター)

【背景】カテーテルアブレーションは, 頻脈性不整脈の起源となる心筋組織をカテーテルで焼灼する治療法であり, 血管穿刺手技による合併症発生率は約1%と報告されている. 今回, 発作性心房細動に対するカテーテルアブレーション後に右下腹壁動脈損傷, 右内腸骨静脈損傷が判明し, 後腹膜血腫による出血性ショック, 腹部コンパートメント症候群, 及び急性呼吸窮迫症候群を併発し, 経カテーテル的動脈塞栓術, 緊急開腹減圧止血術, 体外式膜型人工肺を要する一例を経験したので報告する. 【臨床経過】49歳, 女性, 身長156cm, 体重48kg. 既往歴: 発作性心房細動に対し, 過去に二度カテーテルアブレーションを施行. 右大腿静脈アプローチによるカテーテルアブレーション術後1日目, 突然の腹痛, 嘔吐を発症した. 造影CTにて後腹膜血腫を認め, 右下腹壁動脈の仮性動脈瘤形成が出血源と推測し, 右下腹壁動脈に対し経カテーテル的動脈塞栓術 (以下, transcatheter arterial embolization; TAE) を施行した. しかし, TAE施行中に嘔吐を契機とした急性呼吸窮迫症候群を併発し, 気管挿管による人工呼吸を開始したが, 大量の水様性分泌物の排痰により十分な換気が得られず, 体外式膜型人工肺を導入した. また, 後腹膜血腫による腹部コンパートメント症候群, 及び出血性ショックが遷延し, 緊急開腹術を行った. この際, 右下腹壁動脈の損傷, 右内腸骨静脈の損傷が判明し, 右下腹壁動脈結紮, 右内腸骨静脈修復術を施行した. また, 後腹膜血腫による腹部コンパートメント症候群に対し, 開腹管理を行った. カテーテルアブレーション術後3日目に体外式膜型人工肺を離脱し, 同日閉腹術を施行した. 術後13日目に抜管したが, 術後14日目に両側声帯麻痺による喘鳴が出現し, 再挿管を行った. 術後18日目に抜管し, 術後22日目に集中治療室から一般病棟へ転床した. 【結論】右大腿静脈アプローチによるカテーテルアブレーション後に血管穿刺手技に伴う重篤な機械的合併症をきたした一例を経験した. 鼠径靭帯より中枢側にある血管損傷では, 後腹膜血腫を形成する可能性があり, ときに大量出血による致死的な経過をたどることがあるため, 血管穿刺の際は解剖学的評価による正確な穿刺部位の同定が重要である. また, 血管穿刺後は十分な止血操作と継時的な穿刺部の評価を行い, 合併症の回避とその早期認知に努めることが重要であると考えられる.