[O85-4] 多発肋骨骨折に対するhigh flow nasal cannulaの有用性の検討
【目的】多発肋骨骨折は、疼痛・骨折部の動揺による呼吸負荷や合併する肺挫傷などから呼吸不全を起こすことが多い病態である。またhigh flow nasal cannula (HFNC)は患者の不快感が少なく、呼吸仕事量の軽減や加湿効果による排痰機能改善の効果が見込まれる。当院では多発肋骨骨折の呼吸管理にHFNCを積極的に使用しているが、胸部外傷に対するHFNCのエビデンスはほぼないのが現状である。今回、多発肋骨骨折に対するHFNCの効果について検証を行った。【方法】2013年6月から2018年3月の期間に当救命救急センターに入院した片側2本以上の肋骨骨折かつ胸部AIS3以上の外傷患者で、入院後にHFNCで呼吸管理を開始した33例を対象とした。診療録から後方視的に情報収集し、入院期間中の呼吸管理をHFNCで完遂し得た症例をHFNC完遂群(25例)、経過中に侵襲的人工呼吸器(MV)装着した症例をMV移行群(8例)としてχ2検定・Mann-Whitney U検定で比較検討を行った。また、HFNC装着前後の呼吸数、PaO2/FIO2比、PaCO2の変化をWilcoxon符号付順位和検定で比較検討した。【結果】患者背景、肋骨骨折本数やFlail chest・血気胸・肺挫傷の合併率は両群間で有意差を認めなかった。HFNC完遂群は肺炎の合併が有意に少なかった(12% vs 87.5%, p<0.01)。HFNC完遂群では装着前・3時間後呼吸数[23.5回/分(21.5-25.2)→20回/分(18-24),p<0.05]、装着前後PaO2/FIO2比[168.6(158.2-211.1)→240.2(181.9-299.9),p<0.01]、装着前後PaCO2[41.0mmHg(37.6-45.0)→38.5mmHg(33.6-41.6),p<0.01] [中央値(四分位範囲)]で有意な改善を認めたが、MV移行群では有意な変化は認めなかった。【結語】HFNC完遂群ではHFNC装着前後で呼吸数・PaO2/FIO2比・PaCO2の改善を認めており、多発肋骨骨折に対するHFNCの使用は呼吸負荷を軽減し呼吸状態を改善させる可能性がある。一方MV移行群ではそれらの有意な改善は見られなかったことから、HFNC装着後も呼吸状態の改善が乏しければ適切なタイミングで気管挿管を行う必要があると思われる。