[O88-2] 脳外科術中・術後において血清乳酸値に影響を及ぼす因子および予後の検討
【背景】乳酸値上昇は循環不全や代謝異常の指標とされ、脳外科術中・術後にしばしば経験するが、臨床的意義は不明である。【目的】「脳外科術中・術後の乳酸値が予後に影響する」という仮説の検討を主な目的とした。【方法】2013年2月から2017年6月の手術時間6時間以上の開頭術192人を対象に後ろ向きに検討した。乳酸値(術中最高値、POD0最高値、POD1朝値)と患者因子(年齢、性別、BMI、疾患種(転移性脳腫瘍、原発性良性脳腫瘍、原発性悪性脳腫瘍)、術前神経障害、Charlson comorbidity index、ASA-PS)、周術期因子(手術時間、麻酔方法(吸入麻酔、完全静脈麻酔)、水分出納(術中・POD0・POD1)、浸透圧利尿薬投与(術中・術後))、周術期予後(SOFA値(POD1)、せん妄、術後合併症、新規神経学的異常、術後脳梗塞、ICU滞在日数、病院滞在日数、退院時生存、神経学的後遺症、1年生存)についてWilcoxon/Kruskal-Wallisの検定および単回帰分析を用い調べた。なお、数値は中央値(四分位値)で表記した。【結果】疾患種とPOD0最高乳酸値(転移群3.1(2.3-4.4)mg/dL、良性群2.7(1.8-3.7) mg/dL、悪性群3.2(2.4-4.1) mg/dL)・POD1朝乳酸値(転移群1.9(1.5-2.2) mg/dL、良性群1.4(1.1-2) mg/dL、悪性群1.7(1.2-2.5) mg/dL)および、術中浸透圧利尿薬投与とPOD0最高乳酸値(無群1.8(1.5-3.1) mg/dL、有群2.9(2.2-4.1) mg/dL)・POD1朝乳酸値(無群1.3(0.9-1.7) mg/dL、有群1.7(1.2-2.2) mg/dL)、神経学的後遺症とPOD1朝乳酸値(無群1.55(1.1-2.0) mg/dL、有群1.8(1.3-2.2) mg/dL)に有意差(P値<0.05)を認めた。他項目に有意差を認めず、年齢・BMI・手術時間・水分出納(術中・POD0・POD1)・ICU滞在日数・病院滞在日数・Charlson comorbidity index・SOFA値(POD1)と乳酸値に相関は認めなかった。【結論】周術期乳酸値は、短期・中期生存に差は認めなかったが、神経学的後遺症有無で有意差を認めた。