第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

感染・敗血症 研究

[O93] 一般演題・口演93
感染・敗血症 研究05

2019年3月2日(土) 10:15 〜 11:05 第12会場 (国立京都国際会館5F Room 510)

座長:佐藤 ルブナ(公立大学法人福島県立医科大学附属病院救急医療学講座)

[O93-3] プレセプシンは菌種によらず敗血症の病勢を反映する

平林 茉莉奈, 木下 浩作, 山口 順子, 桑名 司, 澤田 奈実, 堀 智志, 伊原 慎吾, 井口 梅文, 細川 透, 松岡 俊 (日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野)

【背景】近年、プレセプシン(P-SEP)の敗血症における有用性が報告されている。これまで、細菌感染や敗血症の評価にプロカルシトニン(PCT)が広く利用されてきた。さらに、菌の種類によるPCT値の違いについて、グラム陰性菌による敗血症での値がグラム陽性菌による敗血症の値と比べ有意に高値であることが報告された。また、敗血症診断に関して、これまでSIRS(systemic inflammatory response syndrome)を用いた基準が広く利用されてきた。しかし、SIRSを用いた敗血症診断は特異度が低いとされており、特異度を上げるための新たな診断基準が報告され、Sepsis-3として臨床応用されるようになった。P-SEPについて新しい敗血症診断の下で、重症度判定に影響を与える因子や菌種による値の違いがあるのか、PCTとの違いや特徴を明らかにすることが目的である。【方法】本研究は単施設で行った後ろ向き観察研究で、院外から救急車にて搬送され、集中治療室に入室し、Sepsis-3で敗血症と診断された症例24時間以内に血中P-SEP、PCT値を測定し、培養結果ごとのそれらの値の比較や、臓器障害の指標となるsequential organ function assessment(SOFA) スコアとの関連性を調べた。血中PCT値およびP-SEP値を敗血症患者の培養検体より菌が検出されたか否かで分類し、比較を行った。また、培養検体より検出された菌種の違いによっても同様に比較を行った。【結果】研究対象となったのは24時間以内にPCT値を測定した敗血症患者132例で、そのうち、P-SEP値が同時測定されていたのは132例中97例であった。P-SEPは菌が検出されるか否か、また、その菌種にもよらず、その値に差はなかった。対して、PCTは培養から菌が検出された場合に高値(p= 0.0138)を示し、グラム陰性菌が検出された場合に、菌が検出されなかった群よりもその値が高値(p= 0.0023)となった。重症度の指標としてSOFAスコアを用い、P-SEP値とSOFAスコアは有意な正の相関(p<0.0001)を示したが、PCT値とSOFAスコアは相関しなかった。SOFAスコアから腎機能のスコア分を除外した値ともP-SEP値は正の相関(p= 0.0056)を示し、PCT値は相関しなかった。【考察】PCT値は細菌培養で菌が検出される敗血症では高値となるが、P-SEP値は、菌の種類や細菌培養の有無に影響されず、SOFAスコアと正の相関を示す。P-SEP値は、Sepsis-3の診断基準においても臨床的敗血症診断の精度を高め、重症度評価に重要な役割を示すと考える。