第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

外傷・熱傷

[P12] 一般演題・ポスター12
外傷・熱傷01

Fri. Mar 1, 2019 11:00 AM - 11:40 AM ポスター会場12 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:梶田 裕加(愛知医科大学病院 救命救急科)

[P12-5] 交通外傷による骨盤骨折手術に際し転院後25kgの減量を行った一例

井関 将彦, 三住 拓誉, 巻野 将平, 長江 正晴, 江木 盛時, 溝渕 知司 (神戸大学医学附属病院 麻酔科/集中治療部)

【背景】骨盤骨折は高エネルギー外傷の結果である場合が多く、その際は外傷性ショックの管理をしつつ、できるだけ早期に整復と固定を行うことが重要であるとされる。さらに骨折に対し内固定が必要な場合、骨盤内は豊富な側副血行路が発達しており、手術自体での出血も予想される。今回我々は、他院において骨盤骨折による外傷性ショックの管理が行われていたが内固定手術を行うことができず、我々の施設に搬送し約2週間で25kgの減量を行い手術を完遂することができた症例を経験したので報告する。【臨床経過】68歳、女性、身長151cm、体重68kg。既往にB型肝炎があった。交通外傷により骨盤骨折を受傷し出血性ショックとなり、地域基幹病院にて内腸骨動脈塞栓術および輸血療法を行った。入院後の2日間で約9Lの輸血、輸液液が行われ、ドパミン、ノルアドレナリンを併用しながら収縮期血圧を80-90mmHg程度で管理されていた。循環動態が安定した9日目に内固定術が予定されたが術中の出血が予想より多く(約3500ml)、ガーゼパックによる止血で終了した。その1週間後の受傷16日目に再び内固定術とガーゼパック除去術が予定された。しかし、この時点で体重が入院時より約26kg増加し、BMIが42を超え、全身の浮腫が著明に悪化していた。また胸部X線写真ではbutterfly shadowを認め酸素化も悪化していた。これらのことから、手術はガーゼパック除去のみとし、翌日より当院に搬送し、全身管理を行うこととした。ICUに収容後、心エコーで血管内容量を評価しつつ、連日CHDFにて除水を行なった。また血清アルブミン値が低値であったことから、3mg/dlを目標にアルブミンを持続投与した。転院後5日目には体重が15kg減少し、さらにその後5日間で8kg減量した。転院後13日目(受傷後29日目)には全身浮腫も軽減し、転院時体重から25.7kg減量でき循環動態も問題ないことから、転院元の地域基幹病院に搬送し内固定術が計画された。地域基幹病院に戻った翌日(受傷後30日目)に手術が行われた。術中出血が約5000mlであったが、術中循環動態が変動することなく手術は完了できた。受傷後47日目に腎代替療法を離脱、56日目には人工呼吸器を離脱し、現在、退院に向けリハビリを行なっている。【結論】骨盤骨折による外傷性ショックの管理は輸液と昇圧剤による循環維持を漫然と行うのではなく、CHDFを積極的に用いるなど次に行う整復固定術を想定した体液管理が必要である。