第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P13] 一般演題・ポスター13
呼吸 症例01

2019年3月1日(金) 11:00 〜 11:50 ポスター会場13 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:柴田順平(藤田医科大学麻酔・侵襲制御医学講座)

[P13-2] 扁桃周囲膿瘍で窒息した患者に気管への緊急外科的気道確保を実施した1例

上松 敬吾, 藤谷 太郎, 矢野 雅起, 首藤 聡子, 高石 和, 入澤 友美, 原田 佳実, 越智 貴紀, 寺尾 欣也, 高柳 友貴 (愛媛県立中央病院 麻酔科)

【背景】気道緊急は必ずしも人員および器材が揃った手術室でのみ起こるわけではない。集中治療室や救急外来で不穏状態の患者が窒息した場合、種々の学会が提唱する気道緊急アルゴリズム通りに事態が進行するとは考え難く、集中治療医は判断を迅速に行う必要がある。今回、扁桃周囲膿瘍で窒息し、頚部腫脹のため輪状甲状靭帯よりも尾側で緊急外科的気道確保を施行した1例を経験したので報告する。【臨床経過】症例は70歳代の男性。扁桃周囲膿瘍による上気道圧迫のため、当院へ救急搬送された。前医の情報では、意識清明、気道の偏位と狭窄はあるものの仰臥位は保持可能であり、低流量酸素投与で酸素化は良好とのことであった。救急外来に収容した時点で、患者はストレッチャー上で坐位となっており、体動は激しく、著明な不穏状態であった(GCS E4V3M5)。リザーバーマスクを装着し、酸素15L/分を投与したが、SpO2は80%台前半、呼吸数は12回/分であった。胸膝位に近い状態から仰臥位にすることはできなかった。この体位のまま耳鼻咽喉科医によって経鼻ファイバーで声門の状況を確認した直後に患者がuniversal choking signを呈し、数秒後に眼球が上転した。即座に患者を仰臥位とし、経口挿管および輪状甲状靭帯切開による気道確保を試みたが、まず痙攣のため開口が出来なかった。輪状甲状靭帯切開も下顎周囲の腫脹が著明であり、同部位を同定出来なかった。窒息から1分半程度で心拍数が急激に低下したため、胸骨圧迫を開始した。早急に気道を大気に開放する必要があると考え、前頚部縦切開を追加して気管軟骨の走行を触診で確認の上、気管にSeldinger法で気道確保を実施した(メルカー緊急用輪状甲状膜切開用カテーテールセットを使用)。換気可能となり、酸素化は即座に改善し、徐脈も改善したが、GCS E1VTM3であった。窒息から気道確保、酸素化改善までは3分未満の経過であったが、その後集学的治療を施行するも、低酸素性脳症による意識状態は改善しないまま転院となった。【結論】不穏状態にある患者が窒息した場合、気道確保のために適切な体位を保持することが困難であり、手技の難易度は著しく高くなる。加えて前酸素化が十分でない状態で迅速に気道確保を行う必要に迫られる。緊急外科的気道確保を選択した際に、輪状甲状靭帯の同定が困難な場合は、縦切開を追加しSeldinger法を用いた気管への気道確保に変更することは有効な手段と考える。