第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P14] 一般演題・ポスター14
呼吸 症例02

2019年3月1日(金) 11:00 〜 11:40 ポスター会場14 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:藤村 直幸(聖マリア病院 麻酔科)

[P14-1] 成人におけるLarry孔ヘルニアが2型呼吸不全を呈した一症例

多田 周平, 平家 史博, 嶋田 博樹, 甲田 一馬, 恒光 健史, 高田 哲男, 松本 優, 鈴木 崇生 (兵庫県立尼崎総合医療センター 救急集中治療科)

【背景】横隔膜ヘルニアはその症例のほとんどが小児例であり、成人例は稀である。有症状例では腹痛・嘔吐などの消化器症状の他、咳嗽・呼吸困難などの呼吸器症状も報告されているが、その過半数は無症状である。今回、我々はLarry孔ヘルニアが2型呼吸不全を呈した成人例を経験したので報告する。【臨床経過】72歳女性。156 cm 84.8 kg BMI 35 kg/m2と高度肥満であった。慢性的に呼吸困難を自覚していた。来院数日前から体調不良があり、来院当日約2時間前から呼吸困難が急速に増悪したため当院へ救急搬送された。来院時、リザーバーマスクによる10 L/min酸素投与下においてPaO2:86.6 mmHg、PaCO2:114 mmHgと2型呼吸不全を認めた。救急外来で気管挿管、人工呼吸器管理となった。Pressure-Controlled Ventilation管理としたが、吸気圧:30 cmH2O、PEEP:10 cmH2O下にて一回換気量120 mlと高度拘束性換気障害が疑われた。画像所見から横隔膜ヘルニアを疑い、緊急開腹ヘルニア修復術を施行した。ヘルニア門は肝円索の左側、横隔膜の冠状間膜より腹側にあり、Larry孔ヘルニアと同定された。腸管を用手的に引き抜き、ヘルニア嚢切離・ヘルニア門縫合閉鎖・シート留置を行った。手術直後から吸気圧:12 cmH2O、PEEP:15 cmH2O下にて一回換気量380 mlと換気の改善が得られた。術後、全身状態管理目的に集中治療室へ入室した。第4病日にNIPPV待機下に抜管し、第7病日には人工呼吸器を離脱した。第8病日には集中治療室を退室した。【結論】横隔膜ヘルニアの成人例は無症状例が過半数であり、2型呼吸不全を呈する例はほとんどない。また、成人における横隔膜ヘルニアの大部分は食道裂孔ヘルニアであり、Larry孔ヘルニアは稀である。本症例は、術中所見からLarry孔ヘルニアと同定され、ヘルニア修復直後より換気が改善された一例である。病態としては、元来の肥満による慢性的な拘束性肺障害が存在する中で横隔膜ヘルニアが出現し、総肺気量が急激に減少した結果、2型呼吸不全を呈したと推定される。今回我々の経験した症例は、横隔膜ヘルニアが急性呼吸不全をきたしうる病態であり、緊急的な介入が必要となりうることを示唆する貴重な一例である。