第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P15] 一般演題・ポスター15
呼吸 症例03

2019年3月1日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:菅原 陽(横浜市立大学附属病院集中治療部)

[P15-1] 重症筋無力症による嚥下困難が人工呼吸器離脱困難の要因と考えられた一例

鑓水 健也1, 吉岡 成知2 (1.日本海総合病院 麻酔科, 2.日本海総合病院 救急科)

【はじめに】人工呼吸器早期離脱により人工呼吸器関連肺炎の予防や患者のADL・QOLが向上することは周知の事実である。しかし、人工呼吸器早期離脱が困難な症例も日常診療では経験する。今回、人工呼吸器離脱困難の原因が重症筋無力症(Myasthenia Gravis; MG)による嚥下困難と考えられた症例を経験したため報告する。【症例】患者:35歳男性、179.2cm、56.2kg。既往歴:骨髄繊維症、統合失調症。内服薬:プレドニゾロン、抗精神病薬(ベンゾジアゼピン、セロトニン受容体阻害薬、ドパミン受容体部分アゴニスト)。家族歴:筋強直性ジストロフィー(父)。経過:入院数カ月前から頸部痛、四肢の知覚異常、嘔吐を自覚した。某日、発熱と呼吸困難を主訴に前医を受診し、肺炎の診断で当院に転院搬送された。第4病日に夜間不眠の訴えがありセロトニン受容体阻害薬を投与した。その後から呼吸回数が減少し二酸化炭素貯留による意識障害が出現したため、気管挿管し人工呼吸管理を開始した。肺炎の治療と内服薬の調整を行い、第6病日には自発呼吸トライアルを合格し抜管した。しかし、気道分泌物排出不良があり、誤嚥による酸素化悪化を来したため再挿管した。栄養状態改善と気管切開、理学・嚥下リハビリを行い四肢の筋力は回復したが、嚥下を含む頸部保持の筋力は回復せず気道分泌物排出不良により人工呼吸器離脱が困難な状況が続いた。入院前後に神経内科医による診察を受けていたが、再度神経筋疾患の可能性を疑い施行した抗コリンエステラーゼ抗体検査でMGと確定診断し、ステロイドパルス療法が行われた。頸部症状の改善を認め経過観察中である。【考察】本症例の確定診断には入院してから7週間という長い経過を要した。診断に苦慮した原因として、低栄養があること、胸部CT検査で胸腺腫は否定的であること、複数回の神経内科医の診察を受けたこと、四肢の筋力が改善したことがある。人工呼吸器離脱困難の原因は多数報告されているが、日常臨床では複数の因子が関与している場合が少なくない。特に集中治療領域では、意識状態が悪いこと、鎮静・鎮痛薬の使用が判断を困難にする。MG患者で嚥下機能障害を来す頻度は高くないが、鎮静薬の使用で症状が増悪する可能性があるため気道分泌物排出不良を認めた際には念頭に置くべき疾患と考える。【結語】気道分泌物排出不良により人工呼吸器離脱が困難な場合には、MGの可能性がある。