第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

呼吸 症例

[P15] 一般演題・ポスター15
呼吸 症例03

2019年3月1日(金) 11:00 〜 12:00 ポスター会場15 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:菅原 陽(横浜市立大学附属病院集中治療部)

[P15-7] 血液ガス測定時に偽性低酸素血症を認めた慢性骨髄性白血病の1例

中村 直久1, 小野寺 悠2, 秋元 亮1, 中根 正樹2, 川前 金幸1 (1.山形大学医学部附属病院 麻酔科, 2.山形大学医学部附属病院 高度集中治療センター)

はじめに血液ガス分析の測定結果には採血から測定まで種々の因子が影響しうるため、時に正しい値が示されないことがある。しかし、その測定結果によって患者の治療方針が左右されることになるため、より正確なデータを得るための的確な測定手技が望まれる。今回我々は著明な白血球増多により生じた偽性低酸素血症を経験し、採血から測定開始までの時間の重要性を報告する。症例62歳男性。慢性骨髄性白血病(CML)の治療を2年前に自己中断していた。意識障害呈し前医へ救急搬送、採血でWBC810,000/μLと著増していたためCMLの急性転化疑いとして当院転院搬送された。JCSI-2R、リザーバーマスクで酸素 10 L/min投与下でPaO2 65 mmHgの呼吸不全、血小板減少、腎機能障害を認めたためにICUへ入室し、3日後からの化学療法導入の方針となった。入室3日目、NPPV(IPAP 10, EPAP 6hPa, FIO2 0.6)使用中、定時の血液ガス測定時(RAPIDLABTM 1265(Siemens Healthcare Diagnostics Inc)使用)に採血から約5分後に測定したところ、SpO2 99% であったにも関わらずPaO2が50台であった。化学療法導入前で白血球が750,000/μLと依然として高値であったことから白血球の酸素消費がPaO2に影響している可能性を考え採血から測定まで最短の1分まで短縮して施行したところPaO2は130 mmHgであった。そこで正確なPaO2を把握するために採血から1,4,7,10,13分で血液ガス分析を施行しPaO2の変化を確認したところ1→4分で133→80と急速に53 mmHg低下したが4→13分では80→49 mmHgと低下が緩やかとなった。次に採血後すぐに検体を氷冷して同様にPaO2の変化を確認したところ1→4分で150→117と33 mmHgの低下に止まり、PaO2の低下は軽減された。考察白血球が著明に増加したCMLで偽性低酸素血症を生じることに関する症例報告は散見される。これまでのPaO2の時系列を評価した報告は採血から測定までの時間が最短で7分であり、一定の値で低下していた。しかし今回我々の検討では採血からより短期間の1→4分の間で急速にPaO2が低下していたことから偽性低酸素血症によるPaO2測定値の低下はより短時間で急速に生じていると考えられPaO2の正確な評価には秒単位で素早く行う必要があると示唆された。結語白血球が著明に増多している症例の血液ガス検査では、採血後に検体のPaO2は急速に低下することがあり、検体の取り扱いに注意を要する