第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

循環 症例

[P16] 一般演題・ポスター16
循環 症例01

2019年3月1日(金) 11:00 〜 11:50 ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:清水 一好(岡山大学病院 麻酔科蘇生科)

[P16-5] 急性心筋梗塞による難治性心室性不整脈に対し心房ペーシングが有効であった一例

山元 美季, 本間 丈博, 佐々木 基起, 野原 正一郎, 西田 憲史, 大塚 麻樹, 西原 通秀, 福本 義弘 (久留米大学病院 心臓・血管内科)

【背景】急性心筋梗塞の急性期合併症の一つに心室頻拍があるが、時に抗不整脈薬を用いても不応性であることがあり、体外循環を必要とすることや致死的となることもある。また、体外式ペーシングにより心室頻拍を抑制することができるという報告もあるが、一方で心尖部ペーシングにおいては心収縮力を低下させるために、急性心筋梗塞における低心拍出状態では循環の維持が困難となることがある。心房ペーシングでは心尖部ペーシングと比較して心収縮力を低下させないため、急性心筋梗塞における低心拍出状態の患者でも血行動態を維持しながら心室性不整脈の出現を抑制できる可能性がある。【臨床経過】68歳男性。某日外出中の気分不良および便失禁を主訴に救急要請され来院。収縮期血圧70mmHg、脈拍100/分とショックバイタルであり、心電図では胸部全誘導で異常Q波とST上昇、心臓超音波検査では前壁中隔の高度壁運動低下および全周性の心嚢液貯留を認めた。心筋逸脱酵素は正常範囲内であり、発症から時間の経過した急性心筋梗塞による心原性ショックと心破裂による心タンポナーデのため閉塞性ショックを併存していると判断した。まず心嚢ドレナージを施行し、緊急冠動脈造影を施行したところ左前下行枝完全閉塞病変を認めた。発症から少なくとも数日経過していることや緊急手術となる可能性を考慮し、経皮的冠動脈形成術を施行せずに、低心拍出状態に対しては大動脈バルーンパンピング(IABP)と強心剤使用で管理を行う方針とした。その後経過は順調であり第5病日にIABPを抜去したが、第7病日に心室頻拍が出現し、同期電気ショック1回で洞調律復帰した。電解質補正とアミオダロンおよびリドカインの持続静注を開始したが、その後も心室頻拍が出現し同期電気ショックを繰り返さなければならない状態であった。誘因の1つとして徐脈があり、体外式ペースメーカーによる心室ペーシングを施行したが、心室頻拍は認められなくなる一方で非生理的ペーシングのため血圧が低下し血行動態の維持が困難であった。そこで血行動態に関してより生理的である心房ペーシングを行う方針とし、第10病日に植込型除細動器植込術を施行した。その後は心室性不整脈の出現を認めず経過は良好であり、第21病日に継続加療目的に近医転院となった。【結論】急性心筋梗塞による難治性心室性不整脈に対し心房ペーシングが有効であった一例を経験した。