第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

消化管・肝・腎

[P20] 一般演題・ポスター20
消化管・肝・腎02

2019年3月1日(金) 11:00 〜 11:50 ポスター会場20 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:柏浦 正広(自治医科大学附属さいたま医療センター 救急科)

[P20-5] 持続的腎代替療法を要した小児横紋筋融解症の3例

和田 宗一郎, 田村 卓也, 及川 純子, 大谷 杏奈, 齋 秀二, 小杉山 清隆, 長谷山 圭司, 岩田 正道, 南雲 淳 (手稲渓仁会病院 小児科)

【背景】横紋筋融解症は種々の原因によって生じ,時に急性腎障害(AKI)を合併する.しかし,その危険因子や予防,血液浄化の適応などについてエビデンスは乏しく,小児での報告はさらに少ない.我々は持続的腎代替療法(CRRT)を要した小児横紋筋融解症を3例経験した.各症例は異なる背景を持つが,いずれも敗血症の病像を呈して発症した.背景,全身管理,CRRT,原因検索,後遺障害について症例間の相違と既報を比較検討して報告する.【臨床経過】(症例1) 生来健康な8歳女児.インフルエンザB発症の5日後に高CK血症と低血圧性ショックを呈し,横紋筋融解を伴う敗血症性ショックとして集中治療が開始された.高カリウム血症を適応としてCRRTが導入され,約2週間断続的に継続された.腎機能障害は全身状態の改善とともに軽快し,発症1ヶ月の経過で正常化したが,減張切開を要する下腿コンパートメント症候群を合併し運動感覚障害を後遺症として残した.(症例2) 生来健康な8ヶ月女児.7日間持続する発熱後にAKI,高CK血症を合併する低血圧性ショックを呈し当院へ搬送され,横紋筋融解症を伴う敗血症性ショックとして集中治療が開始された.高カリウム血症を適応としてCRRTが導入され,合計8日間断続的に施行された.腎機能障害は全身状態の改善とともに緩徐に軽快し,正常化した.(症例3)早産で出生し脳性麻痺を基礎疾患として有する12歳女児.1歳時にも横紋筋融解症を発症したことがある.姉が1歳時に多臓器不全で死亡しミトコンドリア異常症が疑われていた.さらに父が筋緊張性ジストロフィと診断されている.4日間持続する発熱,嘔吐,下痢ののちに腸球菌菌血症,低血圧性ショック,急性呼吸窮迫症候群,高CK血症,AKIを呈し,敗血症性ショックとして集中治療が開始された.アシドーシスを適応としてCRRTが導入され,合計11日間施行された.腎機能障害は約2ヶ月の経過で緩徐に改善し,軽度腎機能障害を残した状態で退院し外来で経過観察されている.【結論】効率的なミオグロビン除去を志向する血液浄化の工夫が報告されているが,当院の症例は電解質・酸塩基平衡異常の補正のみを目的としたCRRTの施行で既報告と遜色のない予後を得た.小児横紋筋融解では感染症を誘引とする症例が多く初期には敗血症と鑑別困難な症例が存在する.そのような例では敗血症性ショックに準ずる全身管理が肝要である.