第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

ショック

[P21] 一般演題・ポスター21
ショック02

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:40 ポスター会場1 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:中川 隆(常滑市民病院救急医療センター)

[P21-1] 心肺停止に至った非閉塞性腸間膜虚血に対してICU ベッドサイドで壊死腸管切除術を施行し救命し得た一例

勝又 祥文, 立岩 浩規, 矢田部 智昭, 横山 正尚 (高知大学 医学部 麻酔科学・集中治療医学講座)

【背景】非閉塞性腸間膜虚血 (Non-occlusive mesenteric ischemia: NOMI) は、早期では腹部所見に乏しく、重症化後に診断されることが多いため、死亡率が高い。循環動態が極めて不安定な症例では、ベッドサイド手術を考慮すべきとの報告がある。今回、我々は心肺停止に至ったNOMIの症例に対して、ICUベッドサイドで壊死腸管の切除を行い、救命することができた一例を経験したので報告する。
【臨床経過】84歳の男性。陳旧性心筋梗塞、心房細動で当院通院中であった。発熱と意識レベルの低下を主訴に救急外来を受診し、感染症の診断で入院となった。腹部症状はなかったが、入院後、少量の血便を認めた。その後、徐々に血圧低下をきたし、輸液負荷や昇圧剤に反応せず、心肺停止となった。直ちに心肺蘇生を行い,自己心拍再開後ICUに搬入した。その後も、血行動態は不安定で心停止を繰り返した。血便,腹部レントゲン,腹部膨満などからNOMIを疑い,外科医と相談の上,試験開腹術を決定した。循環動態が不安定で,P/F=67と酸素化不良があり,手術室への移動は危険と判断し,そのままICUベッドサイドで開腹した。下行結腸~S状結腸にかけて非連続性に壊死しており、NOMIと診断し壊死腸管を切除した。呼吸循環動態が不安定であったことより、二期的手術の方針として,腸管再建は行わず、簡易閉創で終了とした。術直後より、血清乳酸値は速やかに改善し、呼吸・循環ともに安定した。第4病日に人工肛門造設術を施行し、第11病日に上行結腸からの出血に対して腸管の追加切除を要したが,第16病日に抜管した。第19病日に神経学的後遺症なく,端座位まで可能となり一般病棟に退室した。
【結論】循環,呼吸状態が不安定で手術室への移動が危険と判断したNOMIによる蘇生後症例のベッドサイド手術を経験した。このような症例では外科医との迅速な連携の元でのベッドサイド手術も重要な治療の選択肢の1つと考えられる。