[P21-2] 重症熱中症にストレス誘発性心筋症を合併した一例
【背景】日本救急医学会の熱中症診療ガイドライン2015では、重症熱中症は中枢神経障害、肝障害、腎障害、心筋障害や血液凝固異常などの臓器障害を伴うものとされ、近年熱中症によるストレス誘発性心筋症の報告が散見される。今回、重症熱中症にストレス誘発性心筋症を合併し、低左心機能と神経学的後遺症を残した一例を経験したので報告する。【臨床経過】78歳女性、自宅の浴室で倒れているところを発見され家人が救急要請した。当院到着時体温41.0度、GCS E4V1M1、血圧176/114mmHg、酸素10L/分投与下にSpO2 85%と酸素化不良を認めた。血液検査ではHb 17.8g/dL、Ht 52.9%と血液濃縮所見あり、胸部X線、CT検査で肺うっ血像を、心臓超音波検査でLVEFの低下を認めた。重症熱中症とストレス誘発性心筋症による肺うっ血と判断しNPPV装着、高血圧に対し硝酸剤持続点滴を開始したが利尿得られず、酸素化改善も乏しかったため挿管人口呼吸管理とし、高体温に対しブランケットによる体表冷却を行った。挿管後血圧低下したため、輸液負荷とドパミン、ノルアドレナリンを開始し、血栓塞栓症予防にヘパリン持続点滴を行った。第3病日心室頻拍を繰り返したためカテコラミン持続点滴は中止し一時ペーシングを挿入、またこの時冠動脈造影検査を施行し冠動脈に有意狭窄がないことを確認した。その後心室頻拍の再燃なく、徐々に呼吸状態改善し第18病日に抜管した。心機能は徐々に改善したが、発症1か月の時の心臓超音波検査でLVEF 50%と低差心機能が残存した。また軽度意識障害が遷延したため頭部MRIを施行したところ多発脳梗塞を認め、微小血栓による脳塞栓症と判断した。第34日にリハビリテーション目的に転院した。【結論】来院時、低左心機能を伴うafter load mismatchから肺うっ血を来していたが、血液濃縮所見もあり循環維持のため輸液負荷を要した。また血圧維持のため用いたカテコラミンが心室頻拍を誘発した可能性がある。文献的考察を加え報告する。