[P22-6] 僧帽弁置換術後に脳波が徐波化し、その後脳出血を認めた1症例
僧帽弁置換術後に脳波が徐波化し、その後脳出血を認めた1症例三原 慶介、岩下 耕平、重松 研二、山浦 健福岡大学病院麻酔科文字数制限:1000字現在文字数:948字【背景】鎮静を行っている患者において、適切な鎮静を得るための指標に脳波モニターを使用することがある。今回、再僧帽弁置換術後に脳波に徐波を認め、その後の検査で脳出血を認めた症例を経験したので報告する。【臨床経過】68歳男性。身長158cm、体重55kg。 3年前に僧帽弁閉鎖不全症および三尖弁閉鎖不全症で、低侵襲心臓手術による僧帽弁形成術と三尖弁縫縮術を施行され、外来にて経過観察されていた。3週間前に労作時の息切れがあり、残存していた僧帽弁閉鎖不全の増悪と三尖弁閉鎖不全があったため僧帽弁置換術および三尖弁形成術を行った。手術終了後、挿管のまま外科系集中治療室に入室した。プロポフォールとデクスメデトミジンで鎮静した。鎮静度の評価のためにSedLine(Masimo Corporation, California, USA)を使用した。ICU入室後より低心拍出量症候群となり、カテコラミンを増量するも反応に乏しかったため、術後2日目に大動脈内バルーンパンピング(IABP)を挿入した。また胸腔内血腫があったため再開胸血腫除去術を施行した。術後4日目からプロポフォールを中止したが、GCSは 6T(E2V1TM3)であった。SedLineのPSI値は25-40で経過し、瞳孔不同はなかった。術後6日目、カテコラミン投与下に収縮期血圧80mmHgであり、また肺動脈圧および血清ビリルビン値が上昇してきたため右心不全による循環不全と診断しVA-ECMOを導入した。術後7日目、脳波にときおり徐波の出現があった。瞳孔径に左右差はなかった。術後8日目に瞳孔径に左右差を認め、その後散大した。GCSは3Tで、PSI値は20-25であった。頭部CTで広範囲の出血性脳梗塞があった。IABPとVA-ECMOによって何らかの塞栓子が飛んだことが脳梗塞の原因と考えられた。脳局所酸素飽和度は60-70%であり、経過中に著変はなかった。手術適応はなく脳波が平坦化したため、家族に説明の上VA-ECMOを中止し、同日死亡確認となった。【結論】本症例では出血性脳梗塞が生じたが、瞳孔散大に先立って脳波に徐波が現れた。重症管理において、持続脳波モニターを利用して脳波を経時的に観察することは脳機能の変化を早期に発見するために重要と考えられた。