[P25-4] Aerococcus viridansを起因菌とするurosepsisの一例
【背景】Aerococcus属は好気性グラム陽性球菌であり、感染性心内膜炎や菌血症、高齢男性の尿路感染症などの起因菌となることが知られているが、その分離頻度は低く、グラム染色での外観上はα連鎖球菌様の形態をとるため腸球菌や緑色連鎖球菌との鑑別を要する。尿路感染症の起因菌として腸内細菌科や腸球菌などが多くを占めるが、Aerococcus属はわずか0.2-0.8%と非常に少ない。その中でもAerococcus viridansによる尿路感染症はきわめて稀であり、当院でも本菌が分離同定されたのは今回が初めてであった。
【臨床経過】93歳男性。既往に腰部脊柱管狭窄症を有し、リマプロストアルファデクスを内服していた。尿道からの出血を契機に排尿困難に至り、39℃の発熱、陰茎腫脹、悪寒を主訴に当院を受診した。来院時ショックバイタルであり、血液検査ではWBC 10,200/μl, CRP 2.05mg/dlと炎症反応上昇を認め、Cr 1.19mg/dlと腎機能障害も認めた。腹部エコー所見から膀胱出血を疑い腹部造影CTを撮像したところ、膀胱内に血腫を疑う高吸収域を認め両側の水腎症、腎臓周囲の脂肪織濃度上昇を認めた。膀胱タンポナーデにともなう複雑性尿路感染症、敗血症性ショックと診断し、ICU入室となった。尿道カテーテルの留置および膀胱洗浄を行い、血液培養と尿培養を提出した後に、empiricにピペラシリン/タゾバクタムの投与を開始した。初診時の尿培養からグラム陽性球菌が検出されたため、腸球菌を想定して第3病日にバンコマイシンを追加投与した。心エコー検査を行ったところ感染性心内膜炎は否定的であった。尿量流出は良好であり、ノルアドレナリン投与により循環動態は安定し人工呼吸管理は要さなかった。ICUから退出した第5病日に、初診時に提出した血液培養および尿培養いずれの検体からもAerococcus viridansが同定され、感受性結果に基づいて上記2剤からアンピシリンにde-escalationを行った。第15病日には抗菌薬投与を終了し、第29病日に転院となった。
【結論】高齢男性の尿路感染症の起炎菌としてAerococcus属も想定する必要がある。本菌はペニシリンやバンコマイシンに耐性を示した例も報告されているが、本症例では多剤に感受性を示していた。適切な培養検査とグラム染色に基づいた早期の抗菌薬投与が必要である。
【臨床経過】93歳男性。既往に腰部脊柱管狭窄症を有し、リマプロストアルファデクスを内服していた。尿道からの出血を契機に排尿困難に至り、39℃の発熱、陰茎腫脹、悪寒を主訴に当院を受診した。来院時ショックバイタルであり、血液検査ではWBC 10,200/μl, CRP 2.05mg/dlと炎症反応上昇を認め、Cr 1.19mg/dlと腎機能障害も認めた。腹部エコー所見から膀胱出血を疑い腹部造影CTを撮像したところ、膀胱内に血腫を疑う高吸収域を認め両側の水腎症、腎臓周囲の脂肪織濃度上昇を認めた。膀胱タンポナーデにともなう複雑性尿路感染症、敗血症性ショックと診断し、ICU入室となった。尿道カテーテルの留置および膀胱洗浄を行い、血液培養と尿培養を提出した後に、empiricにピペラシリン/タゾバクタムの投与を開始した。初診時の尿培養からグラム陽性球菌が検出されたため、腸球菌を想定して第3病日にバンコマイシンを追加投与した。心エコー検査を行ったところ感染性心内膜炎は否定的であった。尿量流出は良好であり、ノルアドレナリン投与により循環動態は安定し人工呼吸管理は要さなかった。ICUから退出した第5病日に、初診時に提出した血液培養および尿培養いずれの検体からもAerococcus viridansが同定され、感受性結果に基づいて上記2剤からアンピシリンにde-escalationを行った。第15病日には抗菌薬投与を終了し、第29病日に転院となった。
【結論】高齢男性の尿路感染症の起炎菌としてAerococcus属も想定する必要がある。本菌はペニシリンやバンコマイシンに耐性を示した例も報告されているが、本症例では多剤に感受性を示していた。適切な培養検査とグラム染色に基づいた早期の抗菌薬投与が必要である。