[P25-5] 腹膜炎由来の敗血症性ショックに対するエンドトキシン吸着療法の効果:過去8症例の検討
【はじめに】エンドトキシン吸着療法は、本邦において保険収載されていることもあり、敗血症性ショックに対する治療の一つとして広く行われている。一方で、大規模RCTが行われているにもかかわらず、その有効性については未だ確立していない現状がある。今回、我々が経験した腹膜炎由来の敗血症で、本吸着療法を用いて管理を行った症例を振り返り、その効果について検討した。【方法】当施設において、2016年1月からの2年間に腹膜炎で緊急開腹術を施行した症例のうち、敗血症性ショックを伴い、術後集中治療室にて吸着療法を施行したものを対象とした。8例の該当症例があり、これらについて、背景、管理、経過、転帰などについて、診療録より後方視的に調査した。【結果】平均年齢72.6歳、男女比は5例:3例。原因疾患は大腸穿孔3例、術後吻合不全2例、小腸穿孔壊死1例、絞扼性イレウス1例、中毒性巨大結腸症1例であった。いずれも術前または術中より敗血症を呈し、全例でノルアドレナリンが投与された。吸着療法前後で比較すると、平均血圧は4例で上昇(平均20.1%)し、いずれも施行中にカテコラミンの減量が可能であった。一方、他の4例では下降(平均13.2%)し、カテコラミン増量が必要(うち3例はバゾプレシンも併用)であった。心拍数は8例中6例で減少(平均13.6%)した。酸素化は4例で改善、4例で悪化を認めたが、全ての症例でP/F値200以上を維持(吸着前平均319)できており、重大な呼吸不全は認めなかった。また、6例で持続血液濾過透析が施行され、そのうち3例はAN69ST膜が用いられた。挿管日数やICU滞在日数と、吸着療法前後の血圧変動との間に明らかな関連は認めなかった。1例(中毒性巨大結腸症)は第17病日に死亡に至るも、他7例についてICU転帰は軽快、術後90日転帰は5例が自宅退院または転院、2例については継続入院中であった。吸着療法前のエンドトキシン血中濃度は8例中6例で検出感度以下であった。4.7pg/mlを示した症例(小腸穿孔壊死)は血圧低下例であったが、ICU転帰は軽快であった。【結論】我々が経験した症例に限れば、エンドトキシン吸着療法が全ての症例で期待される効果をもたらしているかどうかは疑問である。我々も適応があれば第一選択の治療と位置付けているが、最近の敗血症治療の進歩をみれば、効果と費用、投入する医療資源などを考慮し判断しても良いのかもしれない。より詳しい検討が期待される。