[P25-6] PICCによる合併症として広範囲の化膿性血栓性静脈炎をきたした一例
「PICCによる合併症として広範囲の化膿性血栓性静脈炎をきたした一例」さいたま赤十字病院 外科1)、君津中央病院 救急・集中治療科2)冨澤 聡史1)、鈴木 崇之1)、前田 慎太郎1)、新井 周華1)、新村 兼康1)、鈴木 利直2)【背景】PICC(peripherally inserted central venous catheter)は内頸や鎖骨下から挿入する中心静脈カテーテルCVC(central venous catheter)と比べ患者の負担も少なく、挿入時の安全性も高いため、近年使用頻度が増えている。しかし、遅発性合併症としてCRBSI(catheter related blood stream infection)や静脈血栓塞栓症などの合併症のリスクもあり、挿入中の管理には十分注意が必要である。【症例】心房細動の既往のある61歳男性。右下腹部痛と発熱を主訴に近医受診し、消化管穿孔疑いで当院紹介となった。CTでは直腸RSでの穿孔を疑い、腹壁直下にはairを伴う膿瘍腔を認めた。膿瘍腔に対してエコーガイド下にpig tailカテーテルを留置し、ドレナージを行うとともに抗生剤加療を開始した。また第5病日に右上腕尺側皮静脈にPICCを挿入しTPN(total parenteral nutrition)での栄養管理を開始した。第16病日から発熱が続き、感染源のコントロール不良と考え、第18病日に開腹ドレナージを施行した。手術診断は直腸憩室穿孔であり、洗浄ドレナージ、小腸部分切除、人工肛門造設術を行った。第20病日に術前に提出した血液培養からcandida parapsilosis が発育したためPICCによるCRBSIを疑いカテーテルを抜去し、抗真菌薬を開始した。後日カテーテル培養からも菌の発育を認めた。エコー・CTでは右上腕尺側皮静脈に充満した血栓を認め、カテーテル挿入部位の血管に一致する発赤を認め、化膿性血栓性静脈炎と診断した。またCTの肺野には開腹ドレナージ時のCTにはなかった新規の多発結節影が出現しており、化膿性血栓性静脈炎に伴う敗血症性肺塞栓症と考えた。化膿性血栓性静脈炎に対しては右上腕尺側皮静脈抜去術・右鎖骨下静脈血栓除去術を行い、抗真菌薬治療を継続した。右上肢には浮腫や運動・感覚の後遺症なく、第92病日に自宅退院となった。【結語】PICC使用期間にカンジダ菌血症、化膿性血栓性静脈炎、敗血症性肺塞栓症を合併し、外科的血栓除去術・静脈抜去術を要した症例を経験した。PICC使用時には挿入前にPICCに伴うCRBSIや血栓症などの合併症に対するリスク評価も必要だと思われる。