第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P30] 一般演題・ポスター30
血液・凝固 症例03

2019年3月1日(金) 14:00 〜 14:40 ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:佐々木 庸郎(公立昭和病院救命救急センター)

[P30-3] ニコランジル内服によるメトヘモグロビン血症を呈したと考えられる一症例

友成 毅1, 中井 俊宏1, 鈴木 あさ美2, 吉澤 佐也2, 三浦 政直1 (1.医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 救急集中治療部, 2.医療法人豊田会 刈谷豊田総合病院 麻酔科)

【背景】メトヘモグロビン血症とは、ヘモグロビン内の2価鉄イオンが酸化されて3価鉄イオンとなり酸素結合能、運搬能力低下を引き起こす病態である。さらに、酸素解離曲線を左方へ移動し、組織での酸素供給の低下をもたらし、重度の場合致命的となる。今回、ニコランジル内服によるメトヘモグロビン血症を呈したと考えられる症例を経験したため報告する。
【臨床経過】83歳女性、数日前から胸部不快感があり、増悪し呼吸苦を認めたため救急外来を受診された。既往として高血圧、糖尿病、狭心症、不眠症があり、ニコランジル、ニフェジピン、エソメプラゾール、ロサルタン、エチゾラム、トリアゾラム、クロチアゼパムを内服していた。来院時、心拍数66bpm、血圧138/66mmHg、SpO2 70%(室内気)であり、口唇チアノーゼ著明であった。マスク酸素10L/min投与下にてSpO2は70%付近で推移していたが、血液ガス検査でPaO2 185.9mmHg、またMet-Hb 45%と高値認め、メトヘモグロビン血症と診断した。NPPVを装着し、ICUに入室となった。アスコルビン酸投与、交換輸血を行い、入室後9時間までにMet-Hb 3.5%まで改善し、それに伴いSpO2も90%台後半まで経時的に上昇した。その後、Met-Hbは正常化し、第5病日に退院された。
【結論】メトヘモグロビン血症は先天性、後天性に分けられ、後天性の多くはアミン類、ニトロ化合物、亜硝酸エステル類、一酸化窒素などの原因物質が報告されている薬剤性である。本症例では酵素活性検査を施行しておらず、先天性の可能性は否定できないが、高齢者で急性発症と思われる経過から薬剤性が疑われた。持参薬からは原因物質と関連する可能性のある薬剤はニコランジルのみであり、ニコランジルによる薬剤性が推察された。問診、残薬確認からはニコランジルの過量服薬の可能性は低く、15mg/日のニコランジルを数年間内服することによりメトヘモグロビン血症が誘発される可能性が示唆された。ニコランジルによるメトヘモグロビン血症の報告は我々が検索する限り、海外で1例のみであり、極めて稀な症例であった。文献的考察を交えて報告する。