第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

血液・凝固 症例

[P30] 一般演題・ポスター30
血液・凝固 症例03

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:40 PM ポスター会場10 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:佐々木 庸郎(公立昭和病院救命救急センター)

[P30-5] 臍帯血移植後の特発性肺炎症候群に対しECMOが有効であった一例

古賀 美佳1, 村山 美和子2, 藤田 尚宏2, 三溝 慎次1 (1.佐賀県医療センター好生館 集中治療部, 2.佐賀県医療センター好生館 総合教育研修センター)

【背景】造血幹細胞移植患者がICUに入室する原因として呼吸不全が最多である。移植後の肺合併症の発症形式は異なり病態は多様であるが,なかでも非感染性肺合併症は治療に難渋することが多く予後不良である。最近,新規治療の有用性が報告されているが,いまだ十分に確立されたものはない。【臨床経過】60歳男性,成人T細胞リンパ腫に対し臍帯血移植を施行された患者。移植後26日目に好中球の生着が確認された。33日目以降,遷延する高度発熱を認め,移植後の感染を疑い抗菌薬,抗ウイルス薬および抗真菌薬を投与するも改善なく,46日目より倦怠感,呼吸困難,頻脈が出現した。その後急速な低酸素血症が進行し,翌日呼吸管理目的にICU入室となった。入室時,高流量酸素療法下でP/F比64と著明に低下しており,気管内挿管による人工呼吸器管理を開始した。一時的に酸素化の改善を認めたものの,入室2時間後には再びP/F比63まで低下し,胸部レントゲンにて両側広範囲のすりガラス陰影の増悪を認めたため(Murrayスコア>2.5),即座に内頸静脈送血・大腿静脈脱血でVV-ECMOを導入した。急性肺障害の原因として,移植後の各種感染症による肺炎と同時に移植片免疫反応による特発性肺炎症候群(idiopathic pneumonia syndrome;IPS)を疑い,現行治療薬にステロイドパルス療法(メチルプレドニゾロン1g/日,5日間)を追加した。徐々にP/F比の上昇,画像上浸潤影の改善を認め,入室4日目にECMOを離脱,8日目に人工呼吸器を離脱した。ECMO施行中,刺入部からの中等度出血以外に明らかな合併症は認められなかった。BALFは著明な血性であり移植後のびまん性肺胞出血なども鑑別に上がったが,感染性肺障害はほぼ否定的であり,経過と合わせIPSが最も疑われた。【結論】IPSは造血細胞移植後に発症する非感染性肺炎として定義されている。IPSの発症率は10%,死亡率が74%と高率であり,さらに人工呼吸器管理を要した症例の生存率は5%以下という極めて予後不良の病態である。治療は,全身性ステロイド投与であるが,近年 ECMO導入による救命例の報告も散見される。今回,臍帯血移植後のIPSに対し,速やかなECMO導入と集学的治療により救命できた症例を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する。