[P32-2] 卵巣奇形腫を合併した抗NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体脳炎の2例
【背景】抗NMDA受容体脳炎は特徴的な精神学的障害、神経学的障害を特徴とする治療可能な自己免疫疾患である。抗NMDA受容体脳炎は卵巣奇形腫を合併することが多く手術による早期腫瘍切除が有効な治療と報告されているが、具体的な手術時期についての報告はまだない。今回我々は、ステージの異なる抗NMDA受容体脳炎患者がそれぞれ手術を受け、異なる転帰を辿った2症例を経験した。【症例】症例1:6ヶ月前に卵巣奇形腫を切除した32歳女性がインフルエンザ罹患2日後に意識障害、5日後に全身痙攣を認めた。その後は抗NMDA受容体脳炎を鑑別疾患に挙げていたが、卵巣奇形腫術後でもあり当初はインフルエンザ脳症を疑い人工呼吸器管理、大量免疫グロブリン療法、血漿交換、ステロイドパルス療法を行った。それでも改善に乏しいため卵巣奇形腫再発・残存を疑いMRIを施行したところ腫瘍が指摘され発症32日後に腫瘍摘出術を施行した。その後は徐々に改善し78病日にICUを退室した。症例2特に既往のない14歳女性が38℃の発熱を発症した5日後に精神障害を発症した。MRIで卵巣奇形腫を指摘されたことと現病歴から抗NMDA受容体脳炎を疑い、発熱から9日目に腹腔鏡下卵巣奇形腫摘出術を施行した。その後神経学的に完全に回復し34日後に退院した。【結論】抗NMDA受容体脳炎は治療可能な疾患であるため、卵巣奇形腫を合併する本疾患が疑われる患者では、たとえ卵巣奇形腫切除後でも腫瘍の再発や残存の可能性があることを念頭に置き、抗体が検出され確定診断に至るまでに手術する必要がある。症例1はステージ3:無反応期に相当、症例2はステージ2:精神病期に相当する。今回の2症例から腫瘍切除は少なくともステージ2までにする必要があると考えられる。