第46回日本集中治療医学会学術集会

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一般演題(ポスター発表)

産科・婦人科

[P33] 一般演題・ポスター33
産科・婦人科02

Fri. Mar 1, 2019 2:00 PM - 2:50 PM ポスター会場13 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:北浦 道夫(香川労災病院)

[P33-6] 帝王切開術後に子宮仮性動脈瘤破裂をきたし、3度にわたる動脈塞栓術により救命しえた1例

日向 俊輔1, 篠原 慶子1, 中村 絵美1,4, 細川 幸希1, ウッドハムス 玲子3, 新井 正康2, 奥富 俊之1 (1.北里大学 医学部 麻酔科学, 2.北里大学 医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学, 3.北里大学 医学部 放射線画像診断学, 4.愛知医科大学病院 麻酔科学)

【背景】子宮仮性動脈瘤は稀ではあるが,破裂により危機的な出血をきたしうる.今回我々は,子宮仮性動脈瘤破裂による出血性ショックから播種性血管内凝固 (disseminated intravascular coagulation: DIC)に至ったが,3度の動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization: TAE)によって救命しえた症例を経験したので報告する.【臨床経過】35歳,妊娠経過に特記すべき異常なし.妊娠36週2日に前期破水と既往帝王切開術のため前医にて緊急帝王切開術を施行した.術後12日目に自宅で突然の性器出血をきたし止血困難のため,当院へ搬送された.来院時のShock Index(SI)は1.7であり,造影CTでは子宮・膣内の血腫および造影剤の漏出を認めた.産科DICスコアは11点であった.ただちに産科危機的出血への対応指針2017に則り,輸血療法とTAEを開始し止血をえて,母体胎児集中治療室へ入室した.入室時循環動態は安定していたが,2時間後に突如不穏となり,再び性器出血を認めた.SI 1.3であり,再度施行した造影CTでは新たな出血源を認め,再びTAEを施行し止血に至った.経過中意識状態の変容を認め気管挿管下の人工呼吸管理とし,一般集中治療室に入室した。入室時循環動態は安定していたが,1時間後SI 1.2となり,多量の性器出血を認めた.再々度施行した造影CTにより新たな出血源を認め,再々度TAEを追加して一般集中治療室へ帰室した。以後,活動性の出血を認めずDICを離脱し,翌々日に抜管した後も合併症なく経過した.総出血量は10,026 gであり,使用した血液製剤は赤血球濃厚液38単位,新鮮凍結血漿32単位,濃厚血小板20単位,乾燥ヒトフィブリノゲン製材3g,乾燥濃縮人アンチトロンビンIII 1500単位であった.動脈塞栓物質は,3回のTAEすべてでゼラチンスポンジを用いた。【結論】産科危機的出血には子宮全摘術などの手術療法も適応となるが,本症例のような重症DICの状況下では難しい.一方TAEは比較的非侵襲的で妊孕性の維持も叶う可能性があり,その有効性は非常に高い.しかし,TAEによる止血不能または再出血により子宮摘出に至る確率は8 %である.TAE直後の血管造影で明らかな造影剤の漏出がなくとも,一時的な血管攣縮のために造影剤漏出を認めない場合や経時的に側副血行路からの血流が増加する場合もあるため,継続した監視が不可欠である.