[P34-2] オキシコドン投与が頻呼吸の改善に有効であったARDSの2症例
【背景】人工呼吸器関連肺障害の新しい予測因子としてMechanical powerが提唱されている。Mechanical powerは呼吸数に比例して増加するため、従来の一回換気量だけでなく呼吸数の管理も重要な因子と考えられる。超急性期に強い自発呼吸努力を抑えるために筋弛緩薬が投与されることもあるが、筋弛緩薬の中止後に頻呼吸を呈することがある。その際、深鎮静やフェンタニルの増量を行うが、頻呼吸のコントロールに難渋することがしばしば経験される。国内外の鎮痛鎮静ガイドラインでは、特定のオピオイドの優位性は示されていない。人工呼吸管理中に使用するオピオイドはフェンタニルもしくはモルヒネの頻度が高いが、オキシコドンを使用した報告は調べ得た範囲ではなかった。頻呼吸の制御が困難なARDS症例に対してフェンタニルからオキシコドンへ変更することにより頻呼吸を制御できた症例を経験したので報告する。【症例1】70歳女性。診断:インフルエンザ感染後肺炎球菌性肺炎。既往:乳癌(多発骨転移)。現病歴:インフルエンザに罹患後5日目から呼吸困難が出現し救急搬送された。低酸素性呼吸不全のため気管挿管・人工呼吸管理とした。挿管後のP/F比は120であった。第1病日から腹臥位療法を継続していたが、酸素化の改善が乏しかった。深い鎮静およびフェンタニル200μg/時まで増量したが、呼吸数30回/分以上と頻呼吸を制御できないためモルヒネ5mg/時へ変更したところ呼吸回数は20回/分と改善を認めたが、急性腎傷害を合併したためオキシコドン3.3mg/時へ変更した。変更後も呼吸数の増加はなかった。26病日に人工呼吸器離脱、56病日にリハビリ転院をした。【症例2】33歳男性。診断:ヘルペス肺炎、ARDS。既往:骨髄異形成症候群に対して6ヶ月前に骨髄移植を実施。現病歴:数日の経過で呼吸状態が悪化しICUに入室。人工呼吸管理を行なったがP/F比80未満が持続したため、V-VECMOを導入した。6日間で離脱したが、離脱後1週間で呼吸状態が再増悪した。頻呼吸が継続し深鎮静でも改善せず、フェンタニル100μg/時からオキシコドン5mg/時へ変更したところ呼吸数は18回/分に低下した。現在も人工呼吸管理中。【結語】オキシコドンはARDS患者の頻呼吸の抑制に有用である。