[P36-2] 大動脈弁置換後、再発性頭蓋内髄膜腫よりの出血の一例
[背景] 頭蓋内髄膜腫は、頭蓋内腫瘍で最も頻度が多く、80%が良性と言われている。主に高齢者に発症し、近年の高齢化に伴う大動脈弁疾患の増加より、その併発の増加も予想される。しかしながら、人工心肺を使用する心血管手術で、髄膜腫併発の報告は、シリーズ化したものでも最大16例と少なく、しかもその中でも再発性髄膜腫例は除外されている。髄膜種自体の自発的出血はまれで、先の16例も周術期の神経学的合併症なく経過している。一方、人工心肺や術後抗凝固療法が、腫瘍周囲の出血や浮腫を増悪させ、重篤な経過をたどった症例も散見される。今回、我々は非常にまれな再発性髄膜腫を伴った大動脈弁置換術(AVR)後に周術期出血をきたした症例と、その早期対応を報告する。[臨床経過] 83歳、男性で72歳より無症候性の重度の大動脈弁閉鎖不全症(AR)を指摘されていた。75歳より慢性心房細動があり、76歳に斜台髄膜腫の摘出術を施行された。術後より、その残存が確認されたが、その後4年間大きさは15x12mmと変化なく経過観察されていた。ARに関しては、以前無症候性である者の、83歳の時点で心臓超音波検査上、収縮期末期径が61mmと増大し、駆出率も40%まで低下してきたため、AVRを施行した。術前、髄膜腫は30x222日まで増大しており、再発性髄膜腫と判断されたが、神経症状なく心臓手術を優先させた。心房細動に関しては罹病期間が長くMAZE手術は行わなかった。術直後より瞳孔不同(右2.5mm 左3.5mm)が認められたため頭部CTを施行したところ、脳幹前方に腫瘍内出血が認められた。脳圧亢進症状はなく、まずは鎮静を継続し、抗凝固療法はせず経過観察した。1POD、2PODと頭部CTを再検し、出血の増大なく瞳孔不同も改善したため、2PODに鎮静を中止したところ、見当識は保たれ、右上肢の軽度の麻痺が認められたのみであったため、人工呼吸器を離脱した。3PODよりワーファリンでなく直接経口抗凝固薬(DOAC)による抗凝固を開始した。軽度の構音障害と嚥下障害も認められたが、リハビリとともに改善傾向を示した。22PODにリハビリ転院し、その2か月後退院し、自力歩行で自宅生活を送っている。[結語]非常に稀な再発性髄膜腫を伴う開心術直後、瞳孔不同を確認し、頭部CTを施行し腫瘍内出血を診断し、早期対応につなぐことが可能であった。