[P37-5] 臓器虚血が示唆され管理と治療方針に難渋したB型大動脈解離の1例
(目的)Stanford B型大動脈解離は一般的に保存的治療がなされるが、臓器虚血を呈した場合何らかの外科的処置が必要となる。今回多彩な解離腔の変化により、臓器虚血を呈しかけたが保存的に管理し得たB型解離の1例を保九九し討論する。 (対象)症例は43歳男性。胸背部痛で発症し、来院。CTにてStanford B型急性大動脈解離と診断され、内科的保存療法でICUに入室した。胸背部痛があるも、上腸間膜動脈(SMA)、腹腔動脈はかろうじで真腔から造影されており、腸管虚血はないと判断した。両下肢の血流は維持されており、右腎動脈は真腔、左腎動脈は偽腔であった。Adam Kubitz動脈も問題なく下肢の麻痺等は認められなかった。乳酸値の上昇 アシドーシスの進行は認めず保存的ICU管理を行った。(結果)第1病日尿量減少し、腎不全が懸念され再度造影CTをとったが、腎臓に左右血流ありと判断、第8病日再度胸背部痛出現、第9病日肝酵素が急激に上昇し再度造影CTとるも腹腔動脈の血流悪化を多少認めたが、門脈血流もあり、末梢の肝動脈は描写されており保存的管理を続行した。イレウス、腸液の停滞は示唆されなかった。その後サイトカインストームで呼吸障害、腎障害が起こり第4病日人工呼吸管理を一時要したが、その後抜管、nasal high flow管理から改善し、大きく血行動態が悪化すること認めなかった。しかし経過中CRP高値が続き、リハビリも幾度か進行が躊躇された。アシドーシスの進行や乳酸値の上昇、肝機能の悪化も認めず、尿量も充分維持できるようになり、第17病日ICU退室となり歩行も可能となった。(考察)Stanford B型大動脈解離における臓器虚血はSMAや下肢虚血に対しては非解剖学的人工血管バイパス術が施行や、SMAに何らかの手術処置を要することの報告が多い。しかし腹腔動脈閉塞による、腹腔内臓器虚血の報告は少なく、またあっても、側副路の発達から肝阻血なども起こしにくい(肝臓は特に門脈血がある)。腎動脈に対する臓器虚血は手術の侵襲を考えると透析導入はやむをえないと考える。(結語)解離腔像安定化(血栓化の不安定)に時間を要し、一次臓器虚血も示唆され、CRP高値が続き管理・方針に難渋した症例を経験したのでICUにおける治療方を考察し討論したい。