第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

臨床薬理

[P45] 一般演題・ポスター45
臨床薬理

2019年3月2日(土) 11:00 〜 11:50 ポスター会場4 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:前田 幹広(聖マリアンナ医科大学病院薬剤部)

[P45-3] ICUにおけるオピオイド持続点滴投与患者へのナルデメジン使用状況調査

伊藤 香織1, 森山 潔2, 小谷 真理子2, 萬 知子2 (1.杏林大学医学部付属病院 薬剤部, 2.杏林大学 医学部 麻酔科学教室)

【背景】近年PADガイドラインが普及し集中治療での鎮痛管理が重視されている。当院ICUでもオピオイドの使用は増加しており、オピオイド誘発性便秘症OIC(Opioid-Induced Constipation)への対策が重要となる。我々は多職種カンファレンスでOIC対策を協議し、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬ナルデメジンの投与を主治医へ積極的に提案している。しかしナルデメジンは経口オピオイドを主体とした担癌患者を対象に臨床試験が行われており、持続点滴静注オピオイドでのデータはない。【目的】当院ICUにおけるナルデメジンの使用状況を把握し安全性を検証する。【方法】本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した後方視的観察研究である。2017年10月~2018年6月に当院一般集中治療室入室中にナルデメジンを3日以上処方された患者の情報を電子カルテより抽出し、使用状況および検査値の推移を調査した。結果は平均±標準偏差or中央値(四分位範囲)で示し、統計解析はEZRを使用し反復測定ANOVAで解析した。【結果】対象患者は51人(男性62.8%)、心臓大血管手術21人(41.2%)、平均年齢70.3±12.7歳、体重60.8±14.3kg、ICU在室日数22.5(15.5-37)日、オピオイド投与日数14(7-23)日、1時間あたりのオピオイド投与量(フェンタニル換算)31.6±10.3μg、オピオイド開始からナルデメジン開始までは平均3.5日、ナルデメジン投与日数11(5-18.5)日であった。また対象期間中に4日以上オピオイドが投与された患者のうちナルデメジンが投与された患者の割合は52.0%であった。ナルデメジン投与開始日、開始3日目、開始7日目、ナルデメジン投与終了日、終了3日目、終了7日目の6点でのデータを比較し、Na、K、Clいずれにおいても有意差は認めなかった。AST、ALT、T-Bilは、ナルデメジン投与終了日以降の大きな変動は見られなかった。CPOTは経時的に低下傾向(p=0.079)で、ナルデメジン投与により疼痛が増強する傾向はみられなかった。【結論】ICUにおけるオピオイド持続点滴投与患者へのナルデメジン使用は、主治医の受け入れも良好で、電解質・肝機能の悪化なく、また疼痛を増強することなく使用できることが確認された。OICの改善効果については今後更なる検証が必要と考えられた。