第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

終末期

[P46] 一般演題・ポスター46
終末期

2019年3月2日(土) 11:00 〜 12:00 ポスター会場5 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:永野 由紀(高知大学医学部附属病院ICU)

[P46-5] Best supportive care患者の非がん疾患に対する緊急手術ならびに集中治療への意思決定と治療

長尾 知哉1, 室田 千晶2, 城田 誠2, 斉藤 琢巳2, 紀野 泰久2 (1.札幌徳洲会病院 外科・乳腺外科, 2.札幌徳洲会病院 外科)

【背景】抗がん治療を終了しBest supportive care(BSC)に移行した患者が非がん疾患を発症した際、治療方針は生命予後や患者の価値観などにより総合的に判断、決定される。内科疾患の場合は薬物治療の範囲内で行われることが多く、手術を要する場合でも待機手術は時間的猶予があるが、緊急手術は医師患者ともに少ない情報や時間で決定せざるを得ない。また、蘇生行為、生命維持装置の取り扱いについても判断が求められる。BSC患者に緊急手術を行い、術後集中治療管理を要した症例を報告する。【臨床経過】81歳男性。腎細胞癌で腎摘出術、肝転移で肝切除術が行われている。肺転移に対し抗癌剤、分子標的薬治療が行われていたが、粘膜障害、皮膚障害のため治療中止を患者が申し出たため治療は終了した。治療医より前医緩和ケア外来に紹介され通院していた。レスパイトケアのため前医短期入院し、その際に嘔吐、右鼠径部膨隆あり当院紹介となった。搬送時右鼠径部膨隆と著明な腹部膨満あり、右鼠径ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断した。また、誤嚥性肺炎も認めていた。鼠径ヘルニアは還納不可であり手術の方針としたが、患者に治療終了後の腎癌予後について治療医から情報提供はされておらず、前医確認も不明とのことであった。患者に手術を要する状態、その場合人工呼吸器から離脱できない可能性、手術を行わない選択もありその場合は緩和医療を提供する旨話した上で手術希望との返答を得た。その後家族に同様の説明と患者本人より手術希望がある旨話し、最終確認を行い手術とした。手術は問題なく終了したが、循環不全、呼吸不全のため抜管せず集中治療室へ収容した。経過中ARDS、DIC、無尿の状態となるもそれぞれ薬物治療を行い、術後15日に抜管した。呼吸筋疲労によるCO2貯留あり夜間NPPV管理とした。前医緩和ケア病棟への転院を打診したが、NPPVへの対応を要するため最終的には術後23日に転院した。術後27日に死亡した。【結論】BSC患者に発症した非がん疾患への対応は判断の前提となる情報が提供されていない場合、医師患者ともに治療決定方針に難渋であり、がん治療医による情報提供に基づくAdvanced care planningやEnd-of-life discussionの普及が必要である。また、入院期間短縮のため、BSC患者でも人工呼吸器などに装着されたまま転院となる例は今後増加すると考えられ、緩和ケア病棟においても医療機器運用への知識が求められる。