第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

鎮痛・鎮静・せん妄 研究

[P53] 一般演題・ポスター53
鎮痛・鎮静・せん妄 研究01

2019年3月2日(土) 11:00 〜 11:50 ポスター会場12 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:神山 治郎(さいたま赤十字病院)

[P53-1] ハロペリドール注射液投与による重症心不全患者の循環動態への影響

伊藤 雄紀1, 横山 俊樹2,3, 河村 隆登1, 大口 裕美1, 中村 直人1, 市原 利彦3, 中島 義仁3, 川瀬 正樹3, 鷹見 繁宏1 (1.公立陶生病院 薬剤部, 2.公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科, 3.公立陶生病院 救急部集中治療室)

【背景】2013年にJ-PADガイドラインが作成されたが、ICUでのせん妄の薬物治療に関しては十分なエビデンスが無いのが現状である。その中で、ハロペリドールは循環動態への影響が少ないと考えられていることや経静脈的投与が可能であることから、古くよりICUでのせん妄治療に用いられてきた。ただ、循環動態について実際に調査した報告は少なく、QT延長や致死的不整脈の報告もあり、心・血管疾患患者には特に慎重に投与する必要がある。そこで今回,当院における重症心不全患者へのハロペリドール注射液投与による循環動態への影響に関する調査を行ったので報告する。【方法】2012年1月から2017年12月の期間で、肺動脈カテーテル挿入中、ハロペリドール投与時に心係数(CI)2.2 L/min/m2以下の患者を対象とした。(1)投与開始時と投与開始から1、3、6時間後の心係数と血圧の推移、(2)カテコラミンと鎮静薬の使用状況、(3)投与前後1日以内の直近の12誘導心電図でのQTc変化、(4)不整脈についての記載、について診療録を後方視的に取得し調査した。【結果】対象症例15例(男性14名,女性1名)、平均年齢は58.0±8.9歳、ハロペリドールの投与量はすべての症例で5mgであった。(1)心係数は投与開始時2.0±0.2L/min/m2、1時間後2.3±0.4L/min/m2、3時間後2.1±0.3L/min/m2、6時間後2.1±0.4L/min/m2、血圧は投与開始時109±16/55±11mmHg、1時間後106±20/51±11mmHg、3時間後104±20/50±10mHg、6時間後105±14/50±11mmHgであり、有意な変化は見られなかった。(2)カテコラミンの増量が1例、鎮静薬の減量が3例、降圧薬の増量が1例に行われていた。(3)投与前のQTcは正常だったが投与後QTc≧450msecに延長していた症例は2例であった。(4)不整脈については、PACやPVCが散見されるといった記載はあったが、投与前後で記載に変化はなく、致死的な不整脈が起こった症例は無かった。【考察】今回の調査結果では、ハロペリドール投与前後で定点的な血圧やCIの変化はみられなかったが、各種薬剤調節は一部で行われていた。また、QTc延長が見られた症例も数例存在し、不整脈リスクも懸念する必要があると考えられた。重症心不全患者におけるハロペリドール投与は少量であってもリスクは存在し、厳密なモニター管理が必要となる可能性が考えられた。