第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

栄養

[P57] 一般演題・ポスター57
栄養

2019年3月2日(土) 11:00 〜 12:00 ポスター会場16 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:東別府 直紀(神戸市立医療センター中央市民病院麻酔科・NST)

[P57-7] 高タンパク質投与が早期の改善につながった重症多発褥瘡の1例

宇治野 智代1, 山本 あゆみ1, 鶴田 容子1, 松永 貴子1, 山形 朝子2, 古川 由人3, 飯尾 純一郎3, 中嶋 いくえ3, 前原 潤一3, 今村 治男1 (1.済生会熊本病院 栄養部, 2.済生会熊本病院 看護部, 3.済生会熊本病院 救急総合診療センター)

【背景】急性期重症患者は腎機能障害を有することが多く、栄養特にタンパク質の投与量設定に難渋する。しかし、褥瘡の治癒には充分なタンパク質とエネルギー投与、微量元素の補給が必須である。今回、腎機能障害を有する重症多発褥瘡患者に対し、腎機能のモニタリングを行いながら高タンパク質投与を行い、褥瘡の改善を得られた症例を経験したので報告する。【臨床経過】既往に糖尿病、高血圧症、心筋梗塞のある71歳男性。来院5日前に自宅で転倒後体動困難となり、右側臥位の同じ姿勢で寝ていた。来院当日に呼吸困難感出現し、当院へ救急搬送となった。広範囲褥瘡を認め、同部位を感染源とした敗血症性ショック、横紋筋融解症、電解質異常、急性腎障害の診断で入院となった。身長165cm、体重82.4kg、BMI 30.3kg/m2、理想体重(IBW)59.8kg。栄養状態としてはAlb 1.9g/dl、Cre 1.05mg/dl、eGFR 54.1ml/分/1.73 m2であり、褥瘡はDESIGN-Rスコア右肩21点、右大転子部28点、殿部29点であった。第2病日にショックを離脱し、経口摂取を開始した。第17病日までにエネルギー量1880kcal(31kcal/IBWkg/日)、タンパク質66g(1.1g/IBWkg/日)へ段階的に増量した。第22病日にCO2ナルコーシスによる呼吸不全を来たし経口挿管となり、以後経管栄養を開始となった。創傷治癒促進のため、最大エネルギー量は2050kcal(34kcal/IBWkg/日)、タンパク質はプロテインパウダーを併用し148g(2.5g/IBWkg/日)まで増量した。広範囲褥瘡に対しては抗菌薬投与、デブリードマン後陰圧閉鎖療法、創内持続陰圧洗浄療法を導入した。上記治療にて退院時Albは2.6g/dl、トランスサイレチンは12.5mg/dlまで上昇した。腎機能は第3病日にCre 1.52mg/dl、eGFR 36.1 ml/分/1.73 m2と悪化したが、その後は高タンパク質負荷にもかかわらず腎機能は改善した。褥瘡はDESIGN-Rスコア右肩6点、右大転子部19点、殿部13点までの改善を認め、第141病日にリハビリ転院した。【結論】ASPENのガイドラインでは1.2-2.0g/BWkg/日、肥満患者においては2.0g/IBWkg/日が弱く推奨されている。今回、タンパク質2.5g/IBWkg/日とガイドラインの推奨量を超える高タンパク質投与を行ったが、腎機能の悪化を認めることはなく栄養状態・褥瘡の改善を認めた。細かなモニタリングを行うことで高タンパク質負荷が容認され、病態の改善につながる可能性がある。