[P6-1] コントロール不良の糖尿病患者における冠状動脈バイパス術術後の手術部位感染(SSI)の検討
【背景】糖尿病は冠状動脈バイパス術(CABG)における最も多い基礎疾患の一つであり、糖尿病患者に対するCABG後の手術部位感染(SSI)発生率は、0.25%~6%と報告されている。糖尿病患者では免疫機能が低下しているため、非糖尿病患者と比較してSSI発生率が高く、糖尿病は重要な予後因子と考えられている。一方、周術期の血糖コントロールを厳密に行えば術前HbA1c値や血糖値に関係なくSSI発生率は非糖尿病患者と変わらないという報告もある。【目的】当院でCABGを施行したコントロール不良糖尿病患者の背景因子と術後経過について検討した。【方法】2015年1月~20018年6月の間、当院でCABGを施行した術前HbA1c ≧8.0%の糖尿病患者を対象とした。SSIに影響しうる因子として、年齢、BMI、周術期の血糖コントロール、腎機能、手術時間、術中出血量を検討項目とした。【結果】対象は20例であり、平均年齢67.8±13.0歳、男性/女性17/3例であった。SSIの有無により非感染群(12例)と感染群(8例)に分けた。非感染群と感染群で術前日の血糖平均(mg/dl)はそれぞれ184.1±38.1、179.2±54.9、術中最高血糖はそれぞれ305.2±81.6、342.5±65.3であった。また術後当日の最高血糖はそれぞれ198.8±56.6、226.6±63.3、術後1日目の最高血糖はそれぞれ244.3±71.2、250.6±43.7、術後1日目の血糖平均はそれぞれ174.6±48.4、177.7±47.9であった。e-GFR(ml/min/1.73m2)は非感染群で56.2±25.0、感染群で68.6±21.6であった。平均手術時間(分)は非感染群で304.1±56.0、感染群で309.5±58.0、平均術中出血量(ml)は非感染群で679.6±1031.2、感染群で631.9±877.7であった。いずれのパラメータにおいても二群間で有意差は認められなかった。【結論】今回の検討では、感染群は非感染群と比較して術当日血糖値と術中最高血糖値がやや高い傾向が見られたが有意差は認められなかった。しかし今回検討対象としたHbA1c ≧8.0%の糖尿病患者における術後感染例は20例中8例と比較的多く、血糖コントロールと術後感染に関するさらなる検討が必要と考えられた。