[P60-4] 脳卒中初期診療における携帯型クレアチニン分析装置の有用性
【背景】脳卒中は発症から治療開始までの時間短縮が予後に寄与する。また、造影剤を用いた画像診断や血管内治療の進歩がめざましい。その一方、禁忌事項の除外を目的とした血液検査は時間を要するが省くことが出来ないジレンマがある。当院では初期診療における時間短縮のため、2016年9月より携帯型クレアチニン分析装置(Stat Sensor i creatinine、Nova Biomedical Corp、米国)を導入し、全血クレアチニン値の測定を開始した。今回我々は、脳卒中患者における携帯型クレアチニン分析装置の妥当性について検討した。【方法】過去1年間に当科で診療に携わった脳卒中患者で、Stat Sensor iを用いて全血クレアチニン値を測定し、同時に中央検査部(Dimension VISTA、Siemens、東京)で血清クレアチニン値も測定した50例を抽出した。このうち1例はGrubbs検定による外れ値として除外した。2つの測定装置によるクレアチニン値について相関分析し、さらにBland-Altman分析を用いて統計学的誤差を検討した。【結果】49例において中央検査と迅速検査におけるクレアチニン値の相関は、相関係数r = 0.7と高い相関関係(p <0.01)を認め、回帰式はy = 0.81x+0.48であった。測定誤差では、年齢、性別、ヘマトクリット値とは相関は認めず、中央検査値と比較して平均0.33高く算出された。Bland-Altman分析では統計学的な加算誤差が認められ、その誤差範囲は-0.2~0.91 mg/dL内に収まる値であった。【結語】携帯型クレアチニン分析装置は加算誤差が認められ、血清クレアチニン値よりも測定値が高くなる傾向がある。高い測定値は解釈に注意し、再検査や血清クレアチニン値の結果を待つ等の対応が必要となるが、携帯型クレアチニン分析装置は脳卒中初期診療の向上に寄与することが示唆された。