[P64-4] RCT(Respiratory care team)主導により腹臥位管理が奏効したレジオネラ肺炎の1例
【背景】当院は2010年に、院内の人工呼吸器を含む呼吸ケア全般の技術、知識および安全性の向上を目的にRCTを立ち上げた。今回我々は、レジオネラ肺炎による重度の呼吸不全のため人工呼吸器管理を行っていた患者に対して、RCTとして介入し、腹臥位療法が奏効した1例を経験したため報告する。【臨床経過】症例は60歳代の男性で、既存症でアルコール性肝硬変を指摘されている。競馬場で悪寒戦慄が出現し、動けなくなったため当院へ救急搬送された。来院時、体温39.0度の発熱があり、レントゲン・CT所見より肺炎をみとめた(A-DROP 1点、qSOFA 1点)。肺炎球菌、レジオネラの尿中抗原は陰性であったため、定型肺炎による菌血症を疑い、一般病棟へ入院。SBT/ABPC 6g/dayの抗菌薬投与が開始された。しかし、38度台の発熱が持続し、努力呼吸出現とともに酸素化が悪化したため、第5病日にHCU(High care unit)へ転棟し、人工呼吸管理となった。救急での初療時の尿中抗原は陰性であったが、気管支鏡検査の検体培養でレジオネラ陽性を認め、レジオネラ肺炎と診断された。AZM 500mg/day投与が開始となったが、両側下肺野の透過性低下は進行し、P/F 200以下へ低下した。人工呼吸器管理7日目でPEEP10、P/F 120となり、RCTへ主治医からコンサルトの依頼を受けた。CT所見上、両側下葉の無気肺をみとめ、チーム内で全身状態が腹臥位に耐えうるかを評価し、腹臥位療法の適応を検討した。適応にあたり、先行研究にあるような長時間の腹臥位は、病棟スタッフのマンパワーの不足から困難であると判断。RCTメンバーが毎日最低1時間の腹臥位を実施、それ以外の時間帯は病棟看護師へ依頼し、体位変換時は必ず前傾側臥位の実施を計画した。腹臥位療法開始直後から、P/F 120から200へ上昇し、人工呼吸器管理14日目にはPEEP8、P/F 300まで改善した。経過中、肝機能障害が原因と思われる覚醒遅延をみとめたが、人工呼吸器管理35日目に離脱した。第68病日目に自宅近くの療養病院へ転院となった。【結論】レジオネラ肺炎により人工呼吸器装着患者に対して、RCTが主導で腹臥位療法の計画を立てた。先行研究にある長時間の腹臥位は、当院では業務上困難であると判断した。本症例では、重症呼吸不全患者に対し、短時間でも腹臥位を行うことで、酸素化の改善をみとめた。RCTとしてチームでの介入は、人工呼吸器の離脱を促進すると考える。