第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

一般演題(ポスター発表)

リハビリテーション 研究

[P65] 一般演題・ポスター65
リハビリテーション 研究01

2019年3月2日(土) 14:00 〜 14:50 ポスター会場3 (国立京都国際会館1F イベントホール)

座長:濱口純(東京都立多摩総合医療センター救命救急センター)

[P65-4] 心臓血管外科手術前後の咳嗽力の変化について

中野 晴恵1, 生須 義久1, 猪熊 正美1, 風間 寛子1, 設楽 達則1, 桑原 拓哉1, 山下 遊平1, 江連 雅彦2, 安達 仁3, 内藤 滋人3 (1.群馬県立心臓血管センター リハビリテーション課, 2.群馬県立心臓血管センター 心臓血管外科, 3.群馬県立心臓血管センター 循環器内科)

【背景】心臓血管外科手術後のリハビリテーションの目的は呼吸器合併症予防と早期離床であり、術後の呼吸機能低下は排痰能力の低下と呼吸器合併症のリスクを増大させる。喀痰排出に必要な咳嗽力は咳嗽時最大呼気流速(cough peak flow : CPF)として評価され、神経筋疾患や腹部外科手術後等において検討が行われているが、心臓血管外科手術後のCPFの変化について報告は少ない。【目的】本研究では心臓血管外科手術後患者を対象に、抜管後の排痰の可否やCPFについて経時的に調査し、抜管後間もない程排痰能力やCPFは低下し、排痰可能群と排痰不可群との間にはCPFに違いがあるとの仮説を立て検討を行った。【方法】平成29 年4月~12月に待機的に心臓血管外科手術を受けた患者46名(平均年齢68.7±11.2歳,男性26名)を対象とし分析的研究を行った。測定項目は排痰の可否とCPFで、手術前、抜管後1日目~7日目まで毎日測定し経時的変化を調査した。また排痰の可否で2群に分けCPFについて群間比較を行った。意識障害や認知症、精神症状によって 指示に従えない患者や、CPF測定時に、咳嗽直前の声帯閉鎖が認められなかった者は対象から除外した。排痰の可否については、排痰に工夫が必要な者、吸引が必要な者を排痰不可とした。統計処理はFriedman検定、Scheffe法、Mann‐Whitney U検定を用いた。なお本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得た上で実施した。【結果】排痰不可例の患者の割合は、抜管後1日目が30.4%、2日目が17.3%と徐々に減少し、7日目には2.2%だった。CPFは手術前の平均252L/minに対し、抜管後1日目は113L/minまで低下し、徐々に回復するが6日目まで有意に低下し(p<0.01)、7日目は190L/minまでの回復に留まった。排痰の可否によるCPFの2群間比較では、抜管後4日目まで有意な差を認めた(p<0.01)。【結語】 心臓血管外科手術後の咳嗽力は抜管後1日目において手術前の約半分に低下し、咳嗽力の低下は遷延することが示唆された。また抜管後間もない程、排痰可能群と排痰不可群との間には咳嗽力に差を認めたことから、手術前の咳嗽力が低い患者には手術前から咳嗽力を高める介入が必要な可能性が考えられた。