[P72-1] PCPS導入時に2本の送血管使用により救命し得た急性心筋梗塞3枝病変の一例
(はじめに)経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)は重症心不全や致死性不整脈による循環不全に対する心ポンプ機能の補助、心肺停止症例に対する蘇生手段として使用されている。致死性不整脈を伴う急性心筋梗塞3枝病変に対して、PCPSを用いたが十分な流量が得られず、送血管を2本にすることで救命できた症例を経験した。(症例)49歳男性、169cm、96kg。早朝より胸部違和感があったが様子を見ていた。深夜、冷汗を伴う胸痛が出現し救急要請。当センター搬送中にVfとなり救急隊によるDC(2相性150J×1回)で意識回復した後、到着となった。既往歴に特記すべきことはなく、喫煙歴は20本/day×30年間であった。入院後経過:精査により急性心筋梗塞の可能性を強く疑い、緊急PCIを施行。3枝病変を認め、PCI施行中にVfとなりDCを複数回施行するも効果はなく緊急でIABPとPCPSを導入した。ICU帰室後、PCPSの送血管からの流量低下が著しく、患者の体格も大きく右大腿動脈から16Frの送血管のみでは流量不足と判断し、右鎖骨下動脈より16Frの送血管を追加留置した。結果、PCPSの流量は安定した。その後、入院4日目にPCPSを離脱、入院7日目にIABPを抜去、入院10日目に抜管し、人工呼吸器を離脱した。しかし、抜管後の深夜に、急激な血圧低下を認めた。ECGでステント血栓症を疑い緊急PCI施行するも、壁運動低下著明で心臓外科にコンサルトとなり、CABG(LITA-♯8、SVG-♯4PD-♯15)の方針となった。CABG後は、循環動態が保てるようになり、5PODにIABP抜去し、7PODに抜管、10PODより食事開始となり、13PODにICU退室となった。(考察)通常PCPSは、送血管を大腿動脈、脱血管を大腿静脈から挿入する場合が多い。本症例は、患者の体格も大きく、大腿動脈からの送血管のみでは十分な流量が得られなかった。対処法としては、1.右大腿動脈からサイズアップした送血管(18Frか20Fr)を入れ替える、2.右腋窩(鎖骨下)動脈からもう1本送血管を追加する、が考えられ本症例では2.を選択した。近年、脳血流への影響を考慮すると、右腋窩(鎖骨下)動脈からの送血の方が、より酸素化された血流を脳に供給できるとの報告が散見される。本症例では2.を選択し、結果患者を救命することができた。(結語)体格が大きい患者にPCPSを導入する場合、十分な流量を供給するために送血管を2本使用することも選択肢の一つである。