[P98-1] 小児心臓外科手術におけるトロンボエラストグラフィー(TEG®6s)の使用経験
【背景】TEGシステムはリアルタイムで全血の分析を行う装置であり、包括的な凝固機能を迅速かつ正確に測定できる。一方で、心臓外科周術期では凝固能がダイナミックに変動するため、手術室内測定に適した装置サイズを有したPoint-of-care装置の利用が各施設でおこなわれている。TEG®6s(HAEMONETICS社:米国)は従来のTEGシステムと比較して、より簡便に高い再現性で試験結果が得られるシステムであり、当院でも止血管理の一端として利用している。TEG®6sに関する臨床研究の報告は少なく、特に小児心臓手術における報告はほとんどない。そこで、当院の小児心臓手術においてTEG®6sを使用した患者を対象に調査をおこなった。【方法】2016年9月から2017年3月までに当院でTEG®6s グローバルヘモスタシスカートリッジを使用して検査をおこなった症例のうち、人工心肺を使用した小児心臓外科手術症例を対象とした。該当する10症例について、診療録、麻酔記録などを用いて後方視的に調査をおこなった。調査項目は、TEG®6sの解析結果をはじめ、年齢、診断名、周術期所見(手術時間、人工心肺時間、輸血量、出血量)、血液検査所見(血色素量、ヘマトクリット値、血小板数、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノゲン量)などとした。【結果】年齢は生後10日から4歳(中央値 1.0ヵ月)であり、診断名は心室中隔欠損症や左心低形成症候群など様々であった。TEG®6sの検査のタイミングは全例が人工心肺離脱後におこなわれた。検査結果はCK-R 11.0~18.4 min(基準値 4.6~9.1 min)、CKH-R 8.8~16.9 min(基準値 4.3~8.3min)と共に延長していた。CK-RとCKH-Rの差は-0.6~3.5 minであり、Activated whole blood clotting time(ACT)が過度に延長している症例でもヘパリン残存の影響はほとんどないと考えられた。また、CFF-MA 2.0~11.7mm(基準値 15~32mm)と、全例でフィブリノゲンの不足を示唆する結果であり、中央検査室における検査結果と同じような傾向を示した。【結論】小児心臓手術症例においてもTEG®6sはPoint-of-care装置として止血管理の一助となると考えられた。今後の研究によっては周術期の輸血使用量の減量などに貢献できる可能性も期待される。