第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD4] パネルディスカッション4
外傷性凝固障害へのアプローチ

2019年3月1日(金) 15:35 〜 17:35 第4会場 (国立京都国際会館1F アネックスホール2)

座長:石倉 宏恭(福岡大学医学部救命救急医学講座), 久志本 成樹(東北大学病院高度救命救急センター)

[PD4-5] 輸血が必要な外傷性凝固障害を早期に同定するための因子の検討

八木 雄史, 戸谷 昌樹, 中原 貴志, 藤田 基, 金田 浩太郎, 河村 宜克, 小田 泰崇, 鶴田 良介 (山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)

【背景】外傷性凝固障害は受傷直後からおこる病態であり、さまざまな要因によりダイナミックに変化する。凝固障害の評価は血液検査で行われ、凝固因子の補充は目標指向型の投与が推奨されているが、来院時の血液検査のみでは凝固因子の補充の要否を判断することが難しい症例も存在する。【目的】来院時点の血清フィブリノゲン(Fbg)値は正常範囲だが、その後の経過で補充が必要となる症例の特徴を検討する。【方法】2013年1月から2017年12月までに当センターに直接搬入された鈍的外傷症例のうち、injury severity score (ISS)が16点以上かつ来院時の血液検査で血清Fbg値が200mg/dL以上の症例を対象とした。来院24時間以内の死亡症例、3時間後の血液検査を施行していない症例は除外した。来院3時間後の血清Fbg値が200mg/dL未満のものをlow-Fbg群、200mg/dL以上のものをn-Fbg群とし、2群間で患者背景、来院時のバイタルサイン、来院時および3時間後の血液検査所見、24時間以内の輸血量、APACHEIIスコア、ISS、ICU-free daysについて後方視的に比較検討した。【結果】対象は30例でlow-Fbg群15例、n-Fbg群15例であった。年齢、性別は両群間で有意差はなく、来院時のバイタルサインではlow-Fbg群でn-Fbg群と比較して体温が有意に低かった(35.8 (35.6-36.4) VS 36.8 (36.5-37.3), P=0.03)が、その他のバイタルサインは有意差を認めなかった。来院時の血液検査では、Fbg値はlow-Fbg群でn-Fbg群と比較して有意に低値であり(231 (222-253) VS 254 (241-299), P=0.04)、Dダイマーは高値であった(135 (71.3-155) VS 35.8 (14.7-57.3), P<0.01)。24時間内の輸血量はRBC(6 (4-13) VS 2 (0-4), P<0.01)、FFP(8 (6-10) VS 0 (0-3), P<0.01)いずれにおいてもlow-Fbg群でn-Fbg群と比較して多く使用されていた。重症度および予後については、ISSは両群間で有意差はなく、APACHEIIスコアはlow-Fbg群でn-Fbg群と比較して有意に高く(26 (15-29) VS 13 (10-17), P<0.01)、ICU-free daysは短かった(4 (0-9) VS 19 (13-22), P<0.01)。死亡例はlow-Fbg群でのみ3例認めたが有意差は認められなかった。【結論】来院時に低体温およびDダイマー高値を認める症例においては、経過中に輸血の必要な凝固障害をきたしやすく、重症度が高い可能性が考えられるため、適時凝固障害のfollow upを行い適切に輸血を行うことが重要と考えられる。