第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY10] シンポジウム10
(小児集中治療委員会企画) PICUがなぜ必要か ~大人と子どもの違いはどこにあるのか?~

Sat. Mar 2, 2019 3:35 PM - 5:35 PM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:黒澤 寛史(兵庫県立こども病院小児集中治療科), 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター救命・集中治療部)

[SY10-2] 成人を中心とする集中治療室の小児管理担当者が抱える葛藤

塚原 紘平 (岡山大学病院 高度救命救急センター)


各地でPICUの普及整備が急務とされるなか、新たなPICU設置、人員の確保は容易ではなく、どこに集約すべきかの議論は未だ解決していない。1996年の小児人口は2020年には当時の50%以下に小児人口は減少しており、重篤小児患者も減少することが見込まれ、集約の議論はさらに非常に難しい局面を迎える。
岡山県は小児専門施設はなく、幾つかの拠点となる小児医療センターを有しているのが特徴である。一方、県内に高度救命救急センターを2カ所有しているのも大きな特徴である。現時点では新たな小児ICUを設置する予定はなく、高度救命救急センターを利用した重篤小児患者医療体制の1モデルを提示してきた。
岡山大学病院高度救命救急センターは2012年に高度救命救急センター化と同時に小児重篤患者の診療体制整備を行ってきた。入室人数は年々増加傾向で有り、年間入室者数は2009年11名、2012年48名、 2017は70名まで増加し、おおよそ入室全体の15%である。PIM2から算出した平均予測死亡率は重篤小児診療体制整備前後で比較するとPre(2009-2011)とPost(2012-2017)で4.1:7.5で、一方実死亡率は4.0:3.0と標準化死亡比(SMR)は46.3まで低下した。重篤小児診療体制の根本は診療の標準化であり、非小児科医である救急科医、看護師が小児診療を無理なく行える下地を作ったことが今回の成果に繋がったものと考えている。
一方、成人中心の集中治療室で入室数が増えていくことで新たな問題は入室困難であり、成人の重症患者も入室してくるため、病床管理に苦労することも多い。また、入り口問題だけではなく、出口問題も大きな課題である。外傷の受け皿はほぼない状態である。また、教育の面では、重症患者の枠組みで成人小児区別せずに基本的な知識は学べるが、70名/年間の小児入室数では小児特有の知識・技術習得に偏りが出てしまうのも否めない。
PICUがある地域は、集約化はハード、ソフトの面でPICUが良いだろう。PICUのない地域に関しては、新たなPICU設置と比べて救命救急センターの利用は有用なのだろうか。今回与えられた課題を踏まえて考察する。