第46回日本集中治療医学会学術集会

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シンポジウム

[SY12] シンポジウム12
周術期における集中治療

Sat. Mar 2, 2019 4:05 PM - 5:35 PM 第8会場 (国立京都国際会館2F Room B-1)

座長:瀬尾 勝弘(小倉記念病院 救急部(麻酔科・集中治療部)), 森松 博史(岡山大学病院麻酔科蘇生科)

[SY12-4] 心臓大血管術後患者の術前ADLは術後血圧管理に影響する

高井 千尋, 多田 勝重, 長谷川 隆一 (獨協医科大学 埼玉医療センター 集中治療科)

ライブ配信】

【背景】社会の高齢化に伴い、70-80代でも侵襲的治療を受けてICU管理となるケースも少なくない。また入院前のactivities of daily living (ADL)が予後に関与することが指摘されるようになり、ADLを考慮した治療内容が重要視されている。一方当院の心臓大血管手術後では収縮期血圧80-140mmHgを目標にカテコラミンなどで血圧を調整しているが、ADL不良例では予備能の低さからバイタルサインが変動し予後が悪化している可能性がある。
【目的】術前のADLと血圧管理の状態、予後などとの関係を調べ、ADL評価が術後の安定した患者状態を予測する目安となりうるか検討すること。
【方法】対象は当院において平成30年6月-8月の間に入室した心臓大血管手術後患者26名。カルテを参照し、術前のADL(障害高齢者の日常生活自立度、Clinical Frailty Scale:CFS)や手術時間・体外循環時間と、カテコラミン使用量、ICU入室期間、人工呼吸期間の相関を後ろ向きに調べた。カテコラミン使用量はカテコラミンインデックスを用いて評価した。
【結果】血圧管理に関しては、全ての症例でほとんどの時間が目標の収縮期80-140mmHg以内にコントロールされていた。血圧コントロールはほとんどが昇圧であり降圧目的にカルシウム拮抗薬を使用した症例は稀であった。手術時間、体外循環時間とカテコラミン使用量に相関はなく(r=0.026, 0.083)、年齢とカテコラミン使用量、人工呼吸期間、ICU入室期間についても関連はみられなかった(r=0.11, 0.25, 0.23)。一方でADLに関しては、CFS、日常生活自立度それぞれとカテコラミン使用量の相関関係がみられた(r=0.73, p<0.05, r=0.74, p<0.05)。ADLと人工呼吸期間、ICU入室期間について相関関係はみられなかった。年齢とカテコラミン使用量、人工呼吸期間、ICU入室期間についても検討したが、いずれも相関関係はみられなかった。
【結論】心臓大血管手術後患者では、術前ADLが低い患者ほど術後血圧管理により多くのカテコラミンを使用していた。ADLは重症度スコアには含まれていないものの予後規定因子となりうると考えられたが、今後さらに症例を蓄積し検討する必要がある。