第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY13] シンポジウム13
ICUの療養環境を考える~睡眠援助の視点から~

2019年3月2日(土) 14:00 〜 15:30 第18会場 (グランドプリンスホテル京都B2F プリンスホール1)

座長:濱本 実也(公立陶生病院看護局), 村田 洋章(国際医療福祉大学成田看護学部)

[SY13-2] ICUの療養環境と睡眠測定方法

高橋 知彦 (慶應義塾大学病院)

ライブ配信】

 医療機器の作動音やアラーム音、医療者の会話や、昼夜問わず提供される治療や看護ケア等に代表されるICUの療養環境は、患者にとって不快なものと認識され、患者の睡眠を阻害する要因と考えられている。しかし、要因の完全な除去は困難なため、耳栓やアイマスクの積極的使用や、夜間の照度を可能な限り低くしたり、看護ケアは日中にまとめて夜間のケアは必要最小限に留めたりするなど、患者の不快と感じる要因を遠ざけることで睡眠の質を上げる複合的な介入が推奨されている。これらICU患者の睡眠促進を意図した看護ケアの介入効果や検証を行うには、客観的で正確な睡眠状況を知る必要がある。
 睡眠状況を定量的に知る方法として、睡眠ポリグラフ検査(PSG)による脳波測定がゴールデンスタンダードではあるが、装置の準備や患者の多大な協力を必要とするため簡便さに欠けるだけでなく、薬剤の脳波への影響を考慮して結果を解釈する必要もある。また、患者の身体活動を基に睡眠状況を評価する方法もあるが、鎮静剤の影響下や、せん妄や不穏行動が顕在化している場合には正確性に欠ける可能性が大きい。そして痛みの評価と同様に、睡眠評価は患者の主観であり、睡眠満足度や熟眠感といった評価も併せてアセスメントする必要もある。看護師による主観的な睡眠評価が、脳波による客観的評価の有効な代用方法となれば良いが、先行研究では、看護師による主観的睡眠評価と、患者による主観的睡眠評価はあまり相関しないと結果となっている。それらを踏まえても、私自身も含めて臨床現場では、その場で収集可能な主観的および客観的情報を統合し、患者の良質な睡眠確保に試行錯誤している実情ではないだろうか。
 主観と客観の両者を兼ね備えた簡便かつ有用な睡眠評価方法の確立は、ICU患者の睡眠の質向上に大いに寄与する点で意義がある。Richardsらは、重症患者の睡眠を定量化する目的でRichards-Campbell Sleep Questionaire(RCSQ)を作成しているが、PSGによる睡眠記録と比較し、信頼性および妥当性を検証するプロセスを経ているため、睡眠に関する研究でも広く用いられている。したがって、ICU患者の睡眠を簡便かつ有用に主観評価できるツールの一つとして考えてよいと思われる。
 今回、少数ではあるがNPPVおよびNHF、挿管中のICU患者を対象として、RCSQを用いたデータ収集および分析を試みた。それらを俯瞰しながら、ICU患者の睡眠の実態と、睡眠の質の向上に向けた看護を考えていきたい。