第95回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

手術室・ICU

手術室・ICU

[102] 脂肪組織由来再生(幹)細胞を用いた再生医療に対する当院の取り組み

白井田 裕司1, 平山 航1, 福田 匠1, 谷 昌樹1, 八百 啓介2, 平中 崇文3 (1.社会医療法人愛仁会 高槻病院 技術部 臨床工学科, 2.社会医療法人愛仁会 高槻病院 技術部 臨床検査科, 3.社会医療法人愛仁会 高槻病院 診療部 整形外科)

【はじめに】
当院では,2017年10月より変形性膝関節症の患者に対し,脂肪組織由来再生(幹)細胞(以下ADRCs)を用いた再生医療をおこなっている.ADRCsは間葉系幹細胞の一種で,軟骨細胞や骨芽細胞,筋細胞などに分化する性質がある.この細胞は培養をおこなわないため,癌化するリスクが低く,自身の細胞を使用するため,拒絶反応が起こることがない.当院での再生医療に対する取り組みについて紹介する.
【方法】
全身麻酔などをおこない,患者の大腿部や腹部から脂肪を採取する.サイトリー・セラピューティクス社製遠心分離器(以下セルーション®)で遠心分離をおこなう.遠心分離で抽出したADRCsの生存率を検査し,患者へ投与する.
【役割】
患者からの脂肪の採取およびセルーション®からのADRCsの採取,患者へのADRCsの投与は整形外科医,セルーション®の操作は臨床工学技士,細胞数の計測は臨床検査技師が担当する.
【結果】
2019年10月末現在,53症例をおこなった.年齢は,69.5±22.5歳で男女比率は,男1:女2であった.当院のADRCsの投与基準は生存率70%以上であり,生存率84.05±11.85%と全症例で基準を上回った.
【考察】
多くの症例でADRCsの生存率が90%を超えたが,70%台となった症例が2例あった.その症例は,いずれも男性であった.女性に比べ,男性は皮下脂肪が少ないため,脂肪がうまく採取できなかったためと思われる.
【まとめ】
この治療に即効性はなく,効果が表れるのは早くて半年先となる.治療効果については患者自身の感覚によるものが大きく,組織が再生されていても,患者が感じる痛みに変化がなければ「効果なし」と判断されてしまう.今後の課題として,組織の再生具合と患者が感じる効果について比較していきたい.