第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

洗浄

洗浄3

2024年6月22日(土) 14:00 〜 15:20 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:長瀬 清(岐阜大学)

14:40 〜 14:50

[T79] 低侵襲手術支援ロボット用インストゥルメントに係る洗浄の安全性に関する研究と開発

秋山 翔 (エム・エス・シー㈱)

【背景】
低侵襲手術支援ロボットのdaVinciの特許切れを合図に,手術支援ロボットのニーズは,拡大の一途を辿っている.その上で,洗浄の分野において,早急な対応が迫られている.低侵襲手術支援ロボット用インストゥルメント(以下 EW[EndoWrist])は複雑な構造をしており洗浄工程も複雑化している.用手法や用手法+機械洗浄が主流であり,特に用手洗浄は,洗浄再生時における作業者への負荷が高い現状がある.そこでマルチモジュールラックを開発することで,機械洗浄を実現し洗浄時間を劇的に短縮することで,感染リスクの低減と生産性の向上をおこない,医療の発展に寄与することができると考えた.
【方法】
hinotoriのEW再生時には,1セットあたり約4時間30分もの時間を要する用手洗浄が基本となる.用手洗浄では手術に制限を及ぼしかねないとのことから,広島大学の日向信之教授と共同し,hinotoriのEWの洗浄ラックを医局,中材,弊社の3者にて開発することとなり,機械洗浄での洗浄有効性と,機械洗浄後のEW機能性を検証した.Step 1,疑似汚染物と実汚染物で用手洗浄と用手洗浄をベースとした機械洗浄との比較検証をおこない,Step 2で,実汚染物で機械洗浄時の熱水消毒工程を含めた検証を実施した.
【結果】
結果として,hinotoriのEWの残留タンパク質量は,100μg以下となり,エンドトキシン値も感度以下で,病原性のある細菌も検知しなかった.医局にて機械洗浄後の機能性に問題がないことも確認できた.
【考察】
本研究の結果は,hinotoriのEWを機械洗浄することができる重要な根拠であると考えられる.患者の身体への負担が少ない低侵襲手術支援ロボットでの手術件数が,益々増加することを踏まえると,作業者の負担軽減と,病院経営の収益性を高めるものとして,大いに資するものとなると考える.