第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

教育講演

腹部

教育講演10

腹部1

2014年9月19日(金) 08:30 〜 09:30 第5会場 (3F 源氏の間西)

座長:兼松雅之(岐阜大学医学部附属病院 放射線部)

[EL10-1] IgG4関連疾患の画像所見

藤永康成 (信州大学医学部附属病院 放射線部)

IgG4関連疾患は本邦より世界に発信された疾患概念であり,2011年にIgG4関連疾患包括診断基準2011が作成された.その概念を以下に抜粋する.

「IgG4関連疾患とは,リンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化により,同時性あるいは異時性に全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患である.罹患臓器としては,膵臓,胆管,涙腺・唾液腺,中枢神経系,甲状腺,肺,肝臓,消化器,腎臓,前立腺,後腹膜,動脈,リンパ節,皮膚,乳腺などが知られている.病変が複数臓器におよび全身疾患としての特徴を有することが多いが,単一臓器病変の場合もある.臨床的には各臓器病変により異なった症状を呈し,臓器腫大,肥厚による閉塞,圧迫症状や細胞浸潤,線維化に伴う臓器不全など時に重篤な合併症を伴うことがある.治療にはステロイドが有効なことが多い.」

 IgG4関連疾患の臨床診断は,大きく形態学的(限局性腫大,腫瘤,壁肥厚),血清学的(血清IgG4が135 mg/dl以上)および病理組織学的所見(組織所見とIgG4陽性形質細胞浸潤)によって行われ,これらがすべて満たされた場合に確診(definite)となる.ただし,この基準により確診できない場合にも,各臓器の診断基準により診断が可能となっている.特に自己免疫性膵炎の場合,過去に報告された症例に関してIgG4関連疾患包括診断基準を用いて診断すると,確診とされる例はほとんどないため,各臓器における診断基準も同時に理解しておく必要がある.近年提唱された各臓器での診断基準の中では,特徴的な画像所見が記載されているものの,確定診断の際には血清学的所見や病理組織学的所見が重視される傾向にある.しかしながら,画像診断は非侵襲的に病理組織像を類推可能であり,経過観察においてもその役割は重要である.
 本講演では,IgG4関連疾患の画像所見について概説するが,本疾患は歴史的に自己免疫性膵炎の研究がきっかけになったと言っても過言でなく,自己免疫性膵炎とその膵外病変としてのIgG4関連疾患といった観点で論を進める.