第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

教育講演

骨関節

教育講演6

骨関節2

2014年9月19日(金) 08:30 〜 09:30 第1会場 (5F 古今の間北・中)

座長:藤本肇(沼津市立病院 放射線科)

[EL6-2] 股関節のMRI:臨床編

川原康弘 (長崎労災病院 放射線科)

本講演では単純写真で見逃しや誤診をきたしやすい骨折,大腿骨頭の骨髄浮腫をきたす疾患,部位が特徴的な疾患,femoroacetabular impingement(FAI)について,MRIの役割や画像診断のポイントを中心に概説する.
見逃しや誤診をきたしやすい骨折は裂離骨折や大腿骨辷り症,大腿骨頚部骨折,ストレス骨折がある.診断の基本は単純写真だが,CT,MRI,骨シンチグラフィが必要な場合もある.大腿骨頭辷り症や裂離骨折の診断においては,MRIは補助的なものとなる.
大腿骨頭骨髄浮腫をきたす疾患は一過性大腿骨頭萎縮症や大腿骨頭壊死症,大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折があり,それぞれの特徴を知っておけば,鑑別可能である.一過性大腿骨頭萎縮症では,単純写真で骨頭骨濃度低下が見られ,MRIで骨頭全体の骨髄浮腫を認めるが,線状低信号はない.大腿骨頭壊死症,大腿骨軟骨下脆弱性骨折では,MRIにて骨頭の骨髄浮腫と線状低信号を認めるが,そのパターンが異なる.
部位が特徴的な疾患は石灰沈着性腱炎や滑液包炎がある.石灰沈着性腱炎は腱の骨付着部を,滑液包炎は滑液包の存在部位を知っておくことが,診断のカギとなる.
FAIは股関節の形態異常により臼蓋と大腿骨頭~頚部の間の衝突が生じ,股関節障害をきたすとする新しい概念の症候群である.臼蓋形成不全のない変形性股関節症の原因として注目されている.cam type,pincer type,combined typeに分類される.cam typeは若年男性に多い.原因は大腿骨頭-頚部移行部の前上部突出で,屈曲・内旋・内転位の際にこの骨性突出と臼蓋前上部が衝突し,関節唇・関節軟骨損傷が生じるとされている.pincer typeは中年女性に多い.原因は臼蓋の過剰な大腿骨頭被覆(overcoverage)で,屈曲・内旋・内転位の際に大腿骨頚部前部と臼蓋前上部の衝突,大腿骨頭後部と臼蓋後部の間の剪断力が生じ,関節唇・関節軟骨損傷が起こるとされている.診断の基本は単純写真で,診断のための多くのサイン,計測法が提唱されている.MRIは大腿骨のα angle計測や関節軟骨・関節唇評価のために施行される.