[O-1-124] MT効果の非対称性によるCASL法推定値の変化を利用したラット虚血領域の評価
【目的】磁気移動(MT)効果の非対称性のため持続的動脈飽和ラベル(CASL)法では、頸部勾配磁場の極性を変化させた場合、算出される脳血流量(CBF)の値が異なることが知られている。このMT効果は頸部に小さい反転コイルを置く2コイル法でも観察される。MT効果の非対称性はRFコイルや勾配磁場コイルの磁場不均一性に依存している部分もあるが、内因性の化合物による化学交換飽和移動(CEST)によっても変化しうる。そこで、脳虚血再灌流モデルラットを対象に、MT効果の非対称性によるCASL法推定値の変化がADCやT2、T1値と関係があるかどうかを調べた。【方法】38匹のSDラットについて、60分の過渡的脳虚血を左中大脳動脈に作成し、24時間後の時点で動物用4.7TMRI装置を用いて測定をおこなった。MRI計測はスピンエコー法によるT2強調画像、拡散強調画像、LookLocker法によるT1画像を取得したのち、ラベル用コイル(Rapid Biomedical, Germany)を用いてCASLの計測をおこなった。CASL計測は頸部勾配磁場1G/cm(Plus Gradient)を加えたときに、頸部コイルの位置にあたる高周波を頸部コイルに加えて測定した画像をMlabel+、測定面と対称な位置の周波数を頸部コイルに加えて測定した画像をMref+とした。同様に頸部勾配磁場-1G/cmを加えて、測定した画像をMlabel-, Mref-とした。非対称性比は(Mref+ - Mlabel+)/(Mref- - Mlabel-)で求めた。【結果・考察】正負両極性の頸部勾配磁場を加えて脳血流量を測定した結果では、MT効果の非対称性のため、負の勾配磁場にくらべ、正の勾配磁場を加えた方が、脳血流量が小さく算出された。非対称性比は虚血側で1に近く、健常側で小さい値を示した。非対称性比はADC、T2、T1、CBF値と相関を認めた。このことは、被対称性比が磁場の不均一性だけではなく、虚血領域におけるCESTの変化等、生化学的な変化に関係しているものと考えられる。