[O-2-184] 横緩和時間の酸素濃度依存性
【目的】組織の酸素飽和度は、脳卒中や悪性腫瘍などの病状の把握や治療効果の推測に重要な指標である。また、酸素分子は常磁性体であるので緩和効果を持つが、その定量的研究、特に横緩和時間の短縮効果が不明である。そこで本研究では、生理食塩水を用い体温での横緩和率(R2)の酸素濃度依存性を求めた。【対象と方法】生理食塩水をビニール袋内に設置した37℃に保った水槽に入れ、酸素ガスをバブリングし3種類の酸素分圧(155、188、230 mmHg)状態を作り、それぞれの状態の溶液を試験管(50 mL)に密封した。3T MRI装置にてそれらの試験管を恒温槽で37℃に保ち、11種類のTE(12~1000 ms)を用いて撮像した。最小のTEから順に複数を選択しR2を求め、選択したTEの範囲および酸素分圧依存性を調べた。【結果と考察】R2を求める際に用いたTEの範囲により値が異なった(図1)。90°励起から180°パルス印加までのTE/2間に試験管内の対流などの影響により、励起された水が励起されない水と交換するが、TEの範囲が500 msまでのときはその影響の増加が認められ、TEの範囲が600 ms以上ではそれらの影響が一定な値で安定した。そこで、TEの範囲が600 ms以上のR2の値からTE = 0 msへの外挿値を求めその値を用いて、R2の酸素分圧依存性(1.1×10-3 [s・mmHg]-1)を求めた。【結論】従来不明であった体温でのR2の酸素濃度依存性が明らかになり、組織酸素濃度に関する新たな情報取得が期待できる。