[P-2-120] 打ち切り特異値分解による正則化計算を用いた磁場分布調整手法
【はじめに】MRI装置用磁石では、40cm球程度の空間における静磁場強度に対してppmオーダの許容誤差磁場に限られる高精度な均一磁場分布が必要である。そのため、鉄片(磁場中で磁化)や永久磁石の配置、小コイル群の電流配分で、精密磁場調整(シミング)を行う。そして、鉄片配置等には、調整後に到達する均一度を把握した計算手法が必要である。この計算に、核融合装置用に開発した電流分布(コイル)設計コードDUCAS利用の手法を開発した。【内容】DUCASは三角要素で曲面を表現し、その要素の接点に電流ポテンシャル(CP、単位A)を配置する。CP値は、その周りを周回する電流値である。各接点のCP値は磁場利用領域で目標の磁場分布を発生するように計算される。CP値の面積積分で、その領域の磁気モーメントを求めることができる。一方、磁化した鉄片、永久磁石や小コイルも磁気モーメントで表すことができる。そこで、数百点の磁場を計測し、目標の一様磁場分布との誤差磁場分布を打ち消す磁気モーメントの配置をDUCASで計算する磁場調整手法を開発した。この計算では、磁気モーメント分布のベクトルMと誤差磁場分布のベクトルBをB=AMの線形方程式で関連付ける。Aは数百x数千の非正方行列である。そのため、打ち切り特異値分解(SVD)による正則化を利用する。SVDで求める固有分布(磁場と電流の分布)を必要個数で打ち切り加算し、磁気モーメント配置を近似計算する。この磁気モーメントを鉄片量等に換算して配置すれば、誤差磁場を減弱できる。【結果】上記の手法を開放型MRI用磁石に試適用した。固有モード数100程度で、残差の磁場分布は数ppm以内に抑制でき、固有モード数を調整すれば、得られる磁場均一度も調整できた。また、磁気モーメントの幾何学的な配置は、任意の配置が可能であるので、広く本手法の考え方は応用可能である。