第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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実践報告1[歩行・姿勢制御] 

2021年10月24日(日) 13:00 〜 14:30 第2会場 (ライブ配信)

座長:菊地 豊(脳血管研究所附属美原記念病院)

13:25 〜 13:50

[PR1-02] 重度の感覚障害を有する脳卒中片麻痺患者の歩行獲得に向けての治療課題をWe-mode cognitionの視点から再考する

*佐々木 克尚1 (1. 四国医療専門学校)

本学術集会のテーマであるWe-mode cognitionは学習の効率を高めるといった側面があり(板倉昭二, 2016)、それを形成するためには他者存在感の知覚、他者視点取得、共同行為、身体運動の同調・干渉という4つの要因が必要である(平井真洋, 2016)。しかし脳卒中片麻痺患者では感覚障害があることでWe-mode cognitionやそれを形成するために必要な要因が損なわれる可能性が考えられる。
 今回、重度な感覚障害を呈した脳卒中片麻痺患者の歩行獲得に向けてリハビリテーションを行った。症例は被殻出血による右片麻痺を呈した80歳台の女性である。随意性の低下や痙縮は軽度であったが重度の表在・深部感覚麻痺を認めた。高次脳機能障害は注意障害、記憶障害と軽度の失語症と観念運動失行を伴っていた。初期には手すりを把持しても立位が取れないほど姿勢制御の低下があり、歩行は平行棒内でも転倒の危険が著しく高かった。歩行獲得を目標とするリハビリテーションの経過をWe-mode cognitionの視点から振り返える。症例は治療課題の際にセラピストが行う介助に気づかず、お互いが抵抗し合っていた。さらに、言語指示による運動の教示をした際に部位や方向、タイミングを間違えるといった特徴があった。これらは治療課題を円滑に進めることに阻害因子となり、学習の効率を低下させていた。We-mode cognitionを形成するための要因の一つである共同行為とは、二人もしくはそれ以上のヒトがある時空間において行為を協調させ、それがある環境に変化をもたらすことである(Sebanz N, et al, 2006)。治療課題は視点を変えるとセラピストと患者が課題の目標を共有し、お互いに協調して課題を遂行する側面があるため、一種の共同行為と捉えることができる。症例は感覚障害によって生じたこれらの現象によって共同行為(治療課題)が阻害され、We-mode cognitionが形成できていないと考えた。今回はこのような症例の経過を通してこれらの考察を深め、臨床におけるWe-mode cognitionの捉え方を議論したい。