第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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実践報告1[歩行・姿勢制御] 

2021年10月24日(日) 13:00 〜 14:30 第2会場 (ライブ配信)

座長:菊地 豊(脳血管研究所附属美原記念病院)

14:10 〜 14:30

[PR1-04] リハビリテーションが共同行為であるために
ー 重度右視床出血を呈した青年期症例とその家族との関わりを通して ー

*佐々木 翔太1 (1. 島根大学医学部附属病院)

【はじめに】
 We-modeの成立は学習効率を大いに高めるとされている。本実践報告の目的は、本症例の経過を通してリハビリテーションが共同行為であるためにはどのようなことが重要であるかを考察することである。

【症例紹介】
 症例は脳室穿破を伴う重度右視床出血を呈した中学生の男性である。介入当初、感覚障害は深部、表在感覚とも重度鈍麻、運動麻痺はBRSⅡ-Ⅰ-Ⅱであった。

【問題点】
 (発症〜1ヶ月:前期)髄膜刺激症状や中枢性疼痛から全身に強い痛みを訴え、離床困難であった。離床開始後も痛みや感覚過敏により端座位や立位姿勢を保持できなかった。
 (発症後1ヶ月〜3ヶ月:後期)左上下肢に運動麻痺、及び運動失調を呈し歩行に介助を要した。

【目標設定】
 (前期)自己身体の状況を把握し、安楽に1日が過ごせること、病室から少しずつ生活空間が拡大することとした。
 (後期)室内、病棟での移動において、快適に歩行できることとした。

【介入】
 全期間を通して家族や病棟スタッフに目標と介入、症例の内部観察情報を共有した。(前期)安楽肢位の探索、上下肢接触空間課題、ストレッチング、車椅子での室外移動等を実施した。特に痛みの病態解釈や、どのように注意、知覚するかという内部観察情報の共有が家族の支援強化、不安軽減に繋がった。(後期)下肢接触空間課題、協調運動練習、段階的な歩行練習等を実施した。特に段階的な目標設定が症例の意欲向上や医療者の意思統一に繋がった。

【帰結(発症98日)】
FMAは下肢25点、Mini-BESTestは24点、歩行は歩行補助具使用せず自立した。SDMRは49点(母60点)であった。

【考察】
 医療におけるWe-modeには患者を取り巻く家族や医療者が含まれ、「個人に施す」という視点から意識を拡張する必要があると考える。患者、家族、医療者がそれぞれの考えを共有する中で目標を認識し、協調しながら共に課題を解決していくことが、リハビリテーションが共同行為であるために重要だと考えられた。