第21回認知神経リハビリテーション学会学術集会

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実践報告2[上肢・高次脳機能障害]

2021年10月24日(日) 14:40 〜 16:10 第2会場 (ライブ配信)

座長:中里 瑠美子(東京女子医科大学東医療センター)

15:50 〜 16:10

[PR2-04] 両手への介入により感覚機能の改善、行為イメージが出現した症例

*鶴窪 良樹1 (1. 西山脳神経外科病院)

両手動作はそれぞれの手の運動能力の組み合わせではなく,認知的な要素を含む統合的な活動である(Zernitz, 2018).今回,両手課題を行い感覚機能の改善が図れた経験を報告する.

 症例は右上肢の違和感が見られ救急搬送された60歳代の男性.画像所見では左被殻出血で血腫が内包後脚,島皮質下に接していた.Br-stageはⅥと運動機能は良好であるが,重度な感覚障害が認められた.表在感覚は中等度鈍麻(3/5),温度覚重度鈍麻(1/5),異常感覚は手掌と手指に認められ「痺れて分厚い層がある」と述べられた.ADL上で右上肢の使用頻度が低下しており,違和感を訴えられた.職業は鮮魚の卸しを行なっていたが魚を捌くという両手行為の想起が困難で「上手く出来ないと思う」と不安な様子を示していた.訓練では右上肢に対し,損傷前行為のイメージとの比較や非麻痺側との比較を用いたが,左右差は顕著であった.ADL時に両手行為を行う際には,痺れの訴えは無く「感覚が戻る」と発言が聞かれた.そこで両手で物体との接触空間関係の表象を行うことにより感覚機能の向上を図れるのではないかと考え両手課題を実施した.二つに分かれたストライプを使用し,左右同時に接触させ,両手の接触,位置関係を想起させた.連続した形状かを問うことで両手の表象が可能になった.約3週間の介入後,退院時では表在感覚軽度鈍麻(4/5),温度覚軽度鈍麻(4/5)となり「痺れない,僅かに薄い膜がある」と感覚機能の改善が図れた.また,課題中,包丁を用いた両上肢で魚を捌くイメージが浮かぶという発言がみられるようになった.

 後部島皮質や第二次体性感覚皮質は,温度覚や侵害受容性刺激に対する神経機構として重要な脳部位と考えられている(花田, 2019).両手動作において島や第二次体性感覚野は両半球に統合的に活動が見られることが明らかになっており,両側脳が活性化され可塑的な変化が図れたのではないかと考える.麻痺側のみの介入時より,両手に焦点を当てた訓練やイメージの開始によって改善が促進されたことから,早期から両手の行為として介入することで急性期における自然回復をより導きやすくなるのではないかと考える.両手課題の組み立てや時期など新たな学習の視点として検討したい.